くらしのガイド

電線が垂れ下がっている・切れている — 触らずに、どこへ連絡する?

最終更新: 2026-09-05/公開情報をもとに作成しています

電線が垂れ下がっている、あるいは切れているのを見つけたときの答えは一つです。触らない、近づかない、周りの人にも知らせて、その線を管理している会社へ連絡する。電力線なら住んでいるエリアの送配電会社、NTTの線ならNTT東日本・西日本、ケーブルテレビなどの線はその線の事業者(線に付いた表示板の社名や、契約先の案内で確認)が窓口です。どの線か分からなければ、電力線の可能性があるものとして、エリアの送配電会社へ連絡してください。火が出ている、人が倒れている、というときは119へ。切れた線が道路をふさいで車や人が危ないなら、110で警察にも知らせてください。

「停電しているから電気は来ていないだろう」「細い線だから電話線だろう」と見た目で判断するのが、いちばん危ない考え方です。

連絡先を決めるための「どの線か」の目安、全国10エリアの送配電会社とNTTの窓口、自宅に入ってくる引込線が垂れているときの考え方を、各社の公開情報だけで整理します。あわせて、もともとある「たるみ」との違い、電線の地上高の決まり、台風のあとに垂れる理由も扱います。屋内の配線や機器の修理・点検は扱いません。停電の原因と復旧の進み方そのものは「台風と停電」の記事に、火花の原因は「電線や電柱から火花が出ている」の記事に任せます。

切れた電線を見つけたら — 触らない・近づかない・連絡する

「もう停電しているから電気は来ていない」とは判断できません。東北電力のFAQ(連絡先は東北電力ネットワーク)は「絶対に近づいたり、触れたりしないよう」、中国電力ネットワークは「絶対に近づいたり、触れたりせずに」連絡を、と同じ言葉で呼びかけ、東京電力パワーグリッドの案内も「切れた電線にはさわらないでください」です。記事末尾に挙げた各社の公開ページで確認できた範囲では、10社とも、切れた線・垂れた線に触れない・近づかないのどちらか、または両方を求めています。停電中でも電気が来ていることがある理由は、後半の「なぜ切れた線が危ないのか」にまとめます。

「細いから電話線だろう、電話線なら電気は来ていない」という判断も禁物です。図鑑の「共架・通信線」でも触れていますが、電力線か通信線かを見た目だけで確実に見分けるのは難しく、どの線に電気が来ているかは外から見ても分かりません。線の種類が分からないうちは、どの線も電力線と同じ扱いにしておくのが、いちばん単純で安全です。NTT東日本も、電話線が切れて垂れ下がっているなどの不安全な状況を見つけたら連絡してほしい、と案内しています(受付は「不安全設備WEB受付」)。触らない・自分で動かさないは、電力線と同じに考えてください。

命や通行に関わる状況は別の窓口です。火が出ている、人が倒れている、というときは119へ。切れた線が道路をふさいで車や歩行者が危ないなら、110で警察にも知らせてください。そのあとで、線を管理する会社にも連絡します。

見つけたら、直るまで近づかないでください。記事末尾に挙げた各社の公開ページで確認できた範囲では、どの会社も「近づかない・触らない」を求めるだけで、安全な距離の数字までは示していません。線が動かなくなっても、その案内は変わりません。自分で棒でよける、車で踏み越える、線を持ち上げて通す、といったことはしないでください。路上の電線を取り除こうとして命を落とした人の例も、後半の章で紹介します。

切れた電線・垂れた電線(図鑑) →共架・通信線(図鑑) →

その線は電力線? 電話線・通信線? — 電柱の段・カバーの色・番号札での見分け方

連絡先を決めるために、電柱に架かる電線の種類の見分け方を、目安として持っておくと役立ちます。NTT東日本(千葉)が公開している「電柱の見分け方」の資料では、電柱に架かる線を上から順に電力会社の線、ケーブルテレビや有線放送などの線、NTTの線、という並びで説明しています。約12mの電柱を例に、地上7m以上が電力会社(電力線・変圧器)、6m付近がケーブルテレビ・有線など、5m付近がNTT東日本と紹介されています。

ただしこれはNTT東日本のエリアでの一例で、資料にも現地の状況により異なる場合があると明記されています。柱の高さや地域、道路の条件でも変わるので、「上が電力、下が通信」という順番だけ覚えておけば十分です。数字を頼りに近づいて高さを確かめるようなことはしないでください。

同じ資料には補助的なサインも載っています。NTT東日本のケーブルのカバーは水色・黄緑・黒のいずれかで、見るのは電柱のそばに付いている部分です。ケーブルテレビなどはケーブルカバーの色が事業者ごとに違い、社名を記した「添架者別表示板」が付いていることがあります。

もう一つの手がかりが電柱番号札です。同じ資料によると、札が1枚ならその札の会社の柱で、資料ではNTT東日本のエリア内で共通とされています。札が2枚、つまり電力会社とNTTが1本の柱を一緒に使っている場合は、同じNTT東日本のエリア内でも地域ごとに読み方が違ううえ、札に会社名が書かれていないこともある、と注記されています。読み方は「電柱番号の調べ方」の記事に任せます。番号を控えておくと連絡のときに場所が正確に伝わる、と東京電力パワーグリッドが紹介しています。

見分けに自信がなくてもかまいません。迷ったら、電力線の可能性があるものとしてエリアの送配電会社へ連絡してください。垂れている線のそばまで行って札を読む必要はなく、離れた場所にある別の柱の番号や、近くの目印で代用できます。確かめようとして近づくくらいなら、確かめないまま連絡してください。

1本の電柱を横から見た図。上段は電力会社の線と変圧器で連絡先は送配電会社、中段はケーブルテレビなどの線でその線の事業者(表示板の社名)、下段はNTTの線でNTT東日本・西日本。地面近くまで垂れた線には近づかず、どの段から垂れているかを離れて見るだけ、と添えている。
どの段の線が垂れているかで連絡先が変わる(高さの数字はNTT東日本・千葉の資料にある一例)出典: 電柱図鑑オリジナル図解(公開情報をもとに作成)

電柱番号の調べ方 — 番号札の見方と検索サービスまとめ →電柱番号札(図鑑) →電力柱・電信柱・共用柱(図鑑) →

電力線なら — 全国10エリアの送配電会社の窓口

電力線の連絡先は、ふだん電気料金を払っている小売の電力会社ではありません。電柱と電線を管理しているのは、エリアごとの送配電会社です。新電力と契約していても同じで、連絡先はその地域の送配電会社になります。自分のエリアの会社が分からないときは、電気事業連合会のリンク集に10社が並んでいます。

関西電力送配電や四国電力送配電のように、チャットで写真を送れる窓口もあります。写真があると状況は伝わりやすくなりますが、撮るために近づいては本末転倒です。安全な距離から撮れる範囲で十分で、撮れなければ言葉で伝えれば足ります。

2026年8月時点で、記事末尾に挙げた公開ページで確認できた範囲では、10社とも切れた線・垂れた線を連絡対象に挙げ、触れない・近づかないのどちらか、または両方を呼びかけています。受付の手段と時間も、同じ範囲でまとめます。

  • 北海道電力ネットワーク(北海道): 「電線・電柱・メーター等の設備」の問い合わせ案内に、電線の垂れ下がり、樹木等の接触、電線や変圧器からの異音・火花・煙が並ぶ。受付は電話・チャット・メールの3つ。
  • 東北電力ネットワーク(東北6県・新潟): 東北電力のFAQ「電線が切れて垂れ下がっている」から東北電力ネットワークの連絡先へ案内。「感電事故防止」のページでは、雪下ろしで電線を切ってしまった場合の連絡も求めている。
  • 東京電力パワーグリッド(関東など): 「停電状況の確認、電線の断線、電線への樹木接触等」をLINE・Webチャット・電話で受付。LINEとWebチャットは全日24時間。電話は午前9時〜午後5時(日・祝日・年末年始を除く)で、停電など緊急の用件は全日24時間。
  • 中部電力パワーグリッド(中部など): お問い合わせメニューの「電線が切れている」「電柱・電線に樹木や飛来物が接触している」を、停電・設備のチャットボットで24時間365日受付。
  • 北陸電力送配電(北陸): FAQ「電線が切れていたり、電柱が折れているのを見つけた場合」で連絡を案内。停電・電気設備の緊急の用件は24時間受付で、チャットも全日24時間。
  • 関西電力送配電(関西): チャットの事例に「電線が垂れ下がっている」があり、写真も送れる。チャットはいつでも利用でき、電話も停電など緊急の用件は受付時間外に対応。「避難するときの注意点」では、切れた線・垂れ下がった線に近づかず触らないよう呼びかけている。
  • 中国電力ネットワーク(中国地方): 「災害に備えて」のページで、切れた電線・垂れ下がった電線の連絡を求めている。「お問い合わせ」ページでは、停電や電線・電柱等の設備に関する用件をチャットと電話で受け付けている。
  • 四国電力送配電(四国): 専用ページ「切れた電線を見つけたら」があり、チャット(画像投稿可)・電話・Webフォームの3つ。電話は停電など緊急の用件を全日24時間、チャットも24時間。Webフォームには電柱番号の入力欄があるが、夜間・土日祝の受付は翌営業日以降の対応と注記されているので、急ぐときは電話かチャットへ。
  • 九州電力送配電(九州): 「切れた電線に近づいたり、触ったりしないでください」のページで、最寄りの九州電力送配電への連絡を案内。電気設備の故障など急ぎの用件は最寄りの配電事業所へ。
  • 沖縄電力(沖縄): 「災害にそなえて」のページで、切れた電線や倒れた電柱を見つけても絶対に触れずに沖縄電力へ連絡を、と案内。「お問い合わせ先」のページには、送配電部門の「停電時の緊急」「送配電設備に係る緊急」の電話窓口と、停電に関するチャット受付が並ぶ。

電話番号は変わることがあるため、このページには載せていません。最新の窓口は各社の公式ページ(記事末尾の参考情報)から確認してください。

停電情報の調べ方 — 全国の停電情報ページまとめ →電柱が傾いている?と思ったら — 連絡先と知っておきたいこと →

電話線・光・ケーブルテレビの線なら — NTT東西と回線事業者の窓口

垂れている線がNTTの線だと分かるときは、NTT東日本・西日本が窓口です。NTT東日本は、故障受付のFAQ「NTTの不安全な設備を発見した」で「不安全設備WEB受付」からの申告を案内しています。2018年の台風のときのお知らせでも「電話線の垂れ下がり等を発見された場合には、NTT東日本へご連絡ください」と呼びかけ、Webの受付と故障受付を案内していました。受付の番号は公式ページで確認してください。

どこまでが連絡の対象かも、このFAQが具体的です。引込線の「垂れ下がり、接触、切断、はずれ」、ケーブルの「垂れ下がり、接触、切断」、電柱の「損傷、ひび割れ、傾斜」、支線の「サビ、ゆるみ」が例として並んでいます。切れていなくても、垂れているだけで連絡の対象です。

NTT西日本はFAQ「傾いた電柱や垂れ下がった電線を見つけた」で「不安全設備WEB受付」を案内しています。2024年3月に新しいシステムに切り替わり、お知らせのページには対象になる設備の例が実物の写真で載っています。

埼玉県狭山市も、冬期は積雪の影響、夏期は台風や雷・豪雨の影響による樹木接触・樹木倒壊等で電話線が切れる場合があるとして、垂れ下がり等を見つけたらNTT東日本の窓口(不安全設備WEB受付など)へ連絡するよう案内しています。

ケーブルテレビや有線放送など、NTT以外の線は、線に付いた添架者別表示板の社名の会社か、契約先の回線事業者の案内で窓口を確認してください。

通信線でも、触らない・自分で持ち上げない・車で踏まない、は同じです。

共架・通信線(図鑑) →電線に木の枝がかかっていたら — 連絡先と知っておきたいこと →

家に入ってくる線(引込線)が垂れているとき

電柱から自分の家に入ってくる線が垂れているときも、連絡先は送配電会社です。引込線は、電柱から建物の「引込線取付点」までが送配電会社の設備だからです。東京電力パワーグリッドは、取付点(黄または赤のチューブが付いているところ)を保安責任と財産の分界点と説明しています。中部電力の「ご家庭内の電気のしくみ」でも、電柱から引込線までは中部電力パワーグリッドの設備で、引込線取付点がお客さまとの財産および責任の境界です。

取付点から家の側、つまり引込口配線や屋内配線はお客さまの設備です。沖縄電力の案内では、引込線接続点までの点検・保守は沖縄電力、それより先はお客さま設備(メーターを除く)で、修理は電気工事店もしくは電気設備保守センターへ依頼するとされています。費用の負担は状況によって変わるので、連絡した先の案内に従ってください。

まわりの家は復旧したのに「うちだけ」戻らない、という状況も引込線の断線で起こります。九州電力送配電の「停電の復旧手順」にも、高圧配電線の復旧後に家庭の引込線の断線などで停電が残る場合が挙げられています。引込線の断線はシステムで自動検出できず、停電情報に載らないことがあります(関西電力送配電FAQ)。中部近畿産業保安監督部近畿支部も、復旧確認後に自宅だけ使えない場合は引込線の断線の可能性があると案内しています。載っていなくても連絡してかまいません。

引込線から火花が出ているときの案内もあります。中部電力パワーグリッドの「台風のときは」では、海に近い地域では塩分ががいしに付いて火花が出ることがある、と説明されています。引込線から火花が出た場合の対応と連絡先も同じページに載っているので、そちらを確認してください。火花の出ている線そのものには近づかないでください。

「うちだけ消えている」ときの切り分け全体は、「停電なのにブレーカーが落ちてない?」の記事にまとめています。

電柱から引込線、取付点、メーター、分電盤までの経路図。取付点(東京電力パワーグリッドの説明では黄または赤のチューブ)を境に、電柱側は送配電会社の設備で送配電会社へ連絡、家側はお客さま設備で電気工事店へ相談(沖縄電力の案内による例)と塗り分け、垂れた引込線は送配電会社へと矢印で示す。
引込線取付点が境目。垂れているのが引込線なら送配電会社へ(イメージ図。チューブの色は東京電力パワーグリッド、家側の相談先は沖縄電力の案内による)出典: 電柱図鑑オリジナル図解(公開情報をもとに作成)

引込線(図鑑) →停電なのにブレーカーが落ちてない? — 「家の外側」で起きていることの見分けかた →停電情報の調べ方 — 全国の停電情報ページまとめ →

少し垂れているのは異常? — もともとの「たるみ」と、電線の地上高の決まり

電線が少したわんで見えるのは、多くの場合ふつうの状態です。電線は、最初からたるませて張られています。高圧の架空電線については、その張り方が書かれた文書があります。経済産業省が公開している「電気設備の技術基準の解釈」(令和7年11月20日改正)は、省令の技術基準を満たす方法を示した文書です。その第66条に、たるみの付け方が書かれています。ケーブルである場合を除き、電線自身の重さと風から受ける力(乙種風圧荷重を使う場合は、電線に付いた氷の重さ=被氷荷重も)を合わせた荷重が加わったときに、引張強さに対する安全率が決められた値以上になるようなたるみで張ること、という内容です。値は、硬銅線と耐熱銅合金線が2.2、それ以外が2.5です。荷重は、その地方の平均温度と最低温度で計算する、とも書かれています。低圧の架空電線でも、使用電圧が300Vを超える場合や多心型電線の場合は、同じ規定に準じることになっています(第66条第2項)。

このたるみは「弛度」と呼ばれます。公益社団法人 日本電気技術者協会が公開している解説では、電線が両支持点間に高低差がなく水平の場合、水平線と電線の最低点との距離を弛度と説明しています。径間の長さ、張力、風圧を含む合成荷重で決まる値です。つまり、たるみは張り忘れではなく、計算に入れて付けられているものです。

通信線の高さには、別の法令が下限を定めています。有線電気通信設備令施行規則 第7条は、架空電線が道路上にあるときは横断歩道橋の上にある場合を除き路面から5m以上、としたうえで、交通に支障を及ぼすおそれが少ない場合で工事上やむを得ないときは、歩道と車道との区別がある道路の歩道上は2.5m以上、その他の道路上は4.5m以上、とも定めています。たるみの分は、この下限を割り込まないように見込まれます。

ですから、たるみがあること自体は、異常のしるしではありません。とはいえ、垂れていること自体を受付の例に挙げている会社もあります。北海道電力ネットワークは「電線の垂れ下がり」を、NTT東日本は引込線・ケーブルの「垂れ下がり」を、それぞれ挙げています。

では、どのくらい低いと「低すぎる」のか。先に断っておきます。これは電線を張るときの下限を決めた基準の話で、現地で測って連絡の可否を決めるための数字ではありません。その下限は、同じ解釈の第68条【低高圧架空電線の高さ】にあります。低圧・高圧の架空電線は、場所ごとに決められた高さより下に張ってはいけない、という定めです。

電柱に共架される通信線の下限は、さきほどの有線電気通信設備令施行規則 第7条が定めています。電柱そのものの高さ(柱長)と間隔は「電柱の高さと間隔をはかってみよう」の記事に任せます。ここでは電力線の下限だけを見ます。前の章に出てきた7m/6m/5mも、現地の配置の一例で、こちらの下限とは役割が違います。区分と値(68-1表)は、次のとおりです。

  • 道路を横断する場合(車がめったに通らない道と、歩く人だけが通る部分は除きます): 路面上6m
  • 鉄道または軌道を横断する場合: レール面上5.5m
  • 低圧架空電線を横断歩道橋の上に施設する場合: 横断歩道橋の路面上3m
  • 高圧架空電線を横断歩道橋の上に施設する場合: 横断歩道橋の路面上3.5m
  • 屋外照明用であって、絶縁電線またはケーブルを使い、対地電圧150V以下のものを交通に支障のないように施設する場合: 地表上4m
  • 低圧架空電線を道路以外の場所に施設する場合: 地表上4m
  • その他の場合: 地表上5m

これらは電線を施設するときの下限として定められた値で、垂れている線に近づいて確かめるための数字ではありません。メジャーを持って測りに行く必要もありません。手が届きそうな高さまで下りている、道路や通学路の上にかかっている、地面に接している。離れた場所からそう見えたら、近づかずに連絡してください。当てはまらなくても、低いと感じたら連絡してかまいません。連絡先は、前の「電力線なら」「電話線・光・ケーブルテレビの線なら」の章に戻って確かめてください。

電柱の高さと間隔をはかってみよう — 標準の数字と、台風のあとの大雨の話 →配電線(図鑑) →

なぜ切れた線が危ないのか — 停電中でも電気が来ていることがある

切れていても電気が流れていることがあります。九州電力送配電は、切れた電線には電気が流れている可能性があり、触ると感電するおそれがあると注意を呼びかけています。関西電力送配電の「復旧のしくみ・復旧の流れ」には、停電発生から1分後に自動的に変電所のスイッチが入り、送電が再開されるしくみが説明されています。止まって見える線がそのままとは限らない、と考えておくほうが安全です。

被覆があっても安全の根拠になりません。関東電気保安協会が公開している事故事例には、台風通過後、路上に垂れ下がった電線を取り除こうとした男性が6,600Vの高圧線に触れて感電死した例があります。降雨で通常より通電しやすい条件が重なったとされ、低圧線でも被覆材に触れただけで感電することがある、と注意が添えられています。「ビニールで覆われているから」は理由になりません。雨のあとや水たまりのそばでは、なおさら距離を取ってください。

台風だけの話でもありません。電気事業連合会は「台風・水害のとき」のページで、切れたり垂れ下がった電線や倒れた電柱に近づかないよう呼びかけていて、「地震のとき」のページも同じ文面です。内閣府がまとめた令和8年1月の大雪の被害状況報告には、経済産業省が、切れた電線・電柱等には感電の危険があるため近づかないことをSNSで呼びかけたと記録されています。東北電力ネットワークは雪下ろしで電線を切ってしまった場合の連絡を案内し、神奈川県は台風の強風で樹木や看板が電線を傷つけて切断されることがあるとして、絶対に近づかず連絡するよう呼びかけています。

「何メートル離れれば安全か」という数字は、この記事で参照した送配電会社・電気事業連合会・経済産業省の公開ページには書かれておらず、「近づかない」とだけあります。できるだけ離れる、これだけです。

瞬停(一瞬の停電)とは?すぐ戻るのはなぜ — 台風と雷の季節に起きやすい条件と家電への影響 →台風と停電 — なぜ起きる?復旧はどう進む? →電線とケーブルの違い(図鑑) →

なぜ台風のあとに垂れるのか — 飛んできたもの、倒れてきたもの、支えているもの

台風や強風のあとに電線が垂れる理由は、二つの方向で整理できます。線にかかったものと、線を支えている側が受けた被害です。

まず、線にかかったものです。関西電力送配電は、強風に伴う飛来物や樹木の倒壊、山崩れなどにより電線が切れたり電柱が倒壊することがある、と説明しています。同社は、トタンや看板、養生シート、テレビのアンテナ等が強風で飛散し、電柱や電線に接触することがある、とも挙げています。中部電力パワーグリッドも、トタンや看板、ビニールシート等が飛ばされて電柱や電線にかかる、と説明しています。そして、電線に木やアンテナ、ビニールハウス、看板などの飛来物が触れていたり、電柱が傾いているのを見つけたら連絡してほしい、と案内しています。

もう一つは、線を支えている側の被害です。規模は、経済産業省の審議会(産業構造審議会 電力安全小委員会)に置かれた「令和元年台風15号における鉄塔及び電柱の損壊事故調査検討ワーキンググループ」の中間報告書(2020年1月21日・経済産業省サイトで公開)に記録されています。東京電力管内で計1,996本の電柱が折損・倒壊・傾斜等の被害を受けた、とあります。同じ表では、架空線のうち電線が5,529径間、断線・混線等の被害を受けています。この電柱1,996本について、同報告書は、倒木や建物の倒壊(約74%)、看板等の飛来物(約14%)、土砂崩れ等の地盤影響(約12%)による二次被害が原因と推定されるものが大半だった、とまとめています。柱が折れたり傾いたりすれば、線を支えている点そのものが下がります。

この割合には但し書きがあります。中間報告書は、1,996本のうち1,579本について、折損・倒壊時の図面・写真や改修管理表から事故原因を整理した、と説明しています。残る417本は、事後の調査と周辺の状況、一部は地域住民へのインタビュー等から推定したものです。電柱の被害原因の内訳であって、電線の垂れ下がりそのものの内訳ではない点にも注意してください。

「もう気づかれているのでは」と思うかもしれません。関西電力送配電は「復旧のしくみ・復旧の流れ」のページで、日々の巡視パトロールにより配電線の異常や損傷の早期発見に努めている、と説明しています。ただし、目の前の線がもう把握されているとは限りません。復旧がどう進むかは「台風と停電」の記事に任せます。作業の車が近くに来ていても、垂れている線には近づかず、気づいた時点で連絡してかまいません。

原因を見分ける必要もありません。停電の原因と復旧の進み方そのものは「台風と停電」の記事に、塩害や湿った汚れによる火花は「電線や電柱から火花が出ている」の記事に任せます。木の枝の扱いは「電線に木の枝がかかっていたら」の記事に、傾いた電柱の見立てと窓口は「電柱が傾いている?と思ったら」の記事に任せます。

台風のあとに電線が垂れる理由を3コマで比べた図。左は飛んできたトタン・看板・シート・アンテナが線にかかって下がった状態、中は倒れてきた木が線に接触して下がった状態、右は電柱の折損・倒壊・傾斜で、線を支える点そのものが下がった状態。各コマにふだんの姿を淡い色で重ね、下がり幅を比べられるようにしている。
台風のあとに電線が垂れる主な理由(イメージ図。淡い線はふだんの姿。原因の分類は各社・報告書の公開情報による)出典: 電柱図鑑オリジナル図解(公開情報をもとに作成)

台風と停電 — なぜ起きる?復旧はどう進む? →電線や電柱から火花が出ている — どこに連絡するか、雨の日・台風のあとに多い理由 →電線に木の枝がかかっていたら — 連絡先と知っておきたいこと →電柱が傾いている?と思ったら — 連絡先と知っておきたいこと →

連絡するとき、何を伝えればいい?

連絡したあとの作業は送配電会社が進めます。復旧の流れは「台風と停電」の記事に任せて、ここでは連絡のときに伝えることを整理します。すべて、離れた場所から分かる範囲で十分です。

  • 場所: 近くの電柱番号。なければ住所や目印
  • 線の状態: 地面に着いている/垂れているが切れていない/切れて揺れている
  • 停電の有無: 自分の家だけか、まわりも消えているか
  • 火花・異音・煙の有無
  • 周囲の状況: 道路・通学路・水たまりのそばかどうか
  • 写真: 安全な距離から撮れたものだけ

垂れているだけで切れていない線も、連絡してかまいません。北海道電力ネットワークは「電線の垂れ下がり」を連絡対象の例に挙げ、NTT東日本も引込線・ケーブルの「垂れ下がり」を受付の対象にしています。

電柱番号の調べ方 — 番号札の見方と検索サービスまとめ →台風と停電 — なぜ起きる?復旧はどう進む? →電気が戻る瞬間に火が出る? — 通電火災のしくみと、いまできる備え →

よくある質問

電線が垂れ下がっているのを見つけたら、どこに連絡すればいいですか?

触らず近づかず、その線を管理する会社へ連絡します。電力線ならエリアの送配電会社です(契約中の小売電力会社ではありません)。NTTの線なら、NTT東日本は「不安全設備WEB受付」か故障受付へ、NTT西日本は「不安全設備WEB受付」へ。ケーブルテレビなどは、線の表示板の社名の会社か契約先の回線事業者へ。どの線か分からなければ、電力線の可能性があるものとして送配電会社へ連絡してください。火が出ている・人が倒れているなら119へ、道路をふさいで通行が危ないなら110で警察にも知らせてください。

垂れている線が電話線か電力線か、見分ける方法はありますか?

目安は電柱の高さです。NTT東日本(千葉)の資料では、上段が電力会社の線、その下がケーブルテレビなど、いちばん下がNTTの線という並びで、約12mの柱で7m以上・6m付近・5m付近という例が示されています。電柱番号札の会社名(書かれていないこともあります)や、電柱のそばに付いているNTTのケーブルカバーの色(水色・黄緑・黒)も手がかりになります。ただし見た目で確実には分からないので、どの線にも触らないでください。

切れた電線は停電しているはずだから、触っても大丈夫ですか?

いいえ。九州電力送配電は、切れた電線には電気が流れている可能性があると案内しています。関東電気保安協会が公開している事故事例のとおり、被覆のある低圧線でも感電することがあります。雨のあとや濡れた場所では、なおさら近づかないでください。

家に引き込まれている電線が垂れています。修理は誰がしますか?費用はかかりますか?

電柱から建物の引込線取付点までは送配電会社の設備なので、まず送配電会社へ連絡します。取付点の目印は、東京電力パワーグリッドの説明では黄または赤のチューブです。取付点から家側の配線はお客さま設備で、沖縄電力の案内では修理は電気工事店もしくは電気設備保守センターへの依頼になるとされています。費用は状況で異なるため、連絡した先の案内に従ってください。

垂れているだけで切れていない電線も、連絡したほうがいいですか?

はい。北海道電力ネットワークは「電線の垂れ下がり」を連絡対象の例に挙げ、NTT東日本も引込線・ケーブルの「垂れ下がり」を不安全設備として受け付けています。垂れている段階で、連絡の対象です。

連絡するとき、電柱番号はどう伝えればいいですか?

近くの電柱の番号札の番号を伝えると場所が正確に伝わる、と東京電力パワーグリッドが紹介しています。四国電力送配電のWebフォームには電柱番号の入力欄もあります。垂れた線に近づいてまで読まず、離れた柱の番号や目印で代用してください。

電線が垂れ下がっている理由は何ですか?

台風や強風のあとは、飛ばされたトタンや看板、シート、アンテナが電線に接触したり、樹木が倒れて電線が切れたり電柱が倒壊したりする、と関西電力送配電と中部電力パワーグリッドが説明しています。一方で電線には設計上のたるみがあり、少したわんで見えるだけなら通常の状態です。原因を見分ける必要はありません。低いと感じたら近づかず、その線を管理する会社へ連絡してください。

電線のたるみはなぜつけているのですか?

高圧架空電線について、電線自身の重さと風圧を受けても引張強さに余裕が残るよう、たるみ(弛度)をつけて張ることが決められているためです。電気設備の技術基準の解釈 第66条は、ケーブルである場合を除き、安全率が硬銅線・耐熱銅合金線で2.2、その他で2.5以上となる弛度により施設すること、荷重はその地方の平均温度および最低温度で計算することを定めています。低圧の架空電線でも、使用電圧が300Vを超える場合や多心型電線の場合は、同じ規定に準じることになっています(第66条第2項)。たるみは異常ではなく、最初から見込まれたものです。

一般道の電線の高さは?

電気設備の技術基準の解釈 第68条の68-1表が、場所ごとの下限を定めています。道路を横断する場合は路面上6m以上、鉄道または軌道を横断する場合はレール面上5.5m以上、低圧架空電線を道路以外の場所に施設する場合は地表上4m以上、これらに当たらない「その他の場合」は地表上5m以上です。これは電線を施設するときの下限を決めた基準で、垂れている線に近づいて測るための数字ではありません。

台風のあとに垂れた電線を見つけました。復旧の車が来ているなら、連絡しなくてもいいですか?

連絡してかまいません。関西電力送配電は日々の巡視パトロールで配電線の異常や損傷の早期発見に努めていると説明していますが、その線がもう把握されているとは限りません。作業の人がいても、垂れている線には近づかないでください。

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