くらしのガイド
電気が戻る瞬間に火が出る? — 通電火災のしくみと、いまできる備え
最終更新: 2026-08-15/公開情報をもとに作成しています
長い停電のあと、パッと明かりがつく——ふつうなら、ほっとする瞬間です。ところが、この「電気が戻る瞬間」に火が出ることがあります。「通電火災」と呼ばれる火災です。
地震のあとの火災、というイメージが強い言葉ですが、それだけではありません。台風や大雨で停電と浸水が重なったあと、電気が戻るタイミングでも起きることが注意喚起されています。台風の季節にこそ、知っておきたい話です。
このページでは、通電火災とは何か、なぜ「電気が戻る瞬間」に火が出るのか、そして電柱の図鑑らしく「復旧のしくみの側から見ると何が見えるか」を、消防庁・内閣府・NITE(製品評価技術基盤機構)などの公開情報をもとに整理します。なお、家の中の電気設備の点検や操作については、このサイトでは扱いません。公式の呼びかけを、出典つきでそのまま紹介する形をとります。
「通電火災」とは — 電気が戻る瞬間に起きる火災
消防庁の令和2年版消防白書のコラム「地震火災対策について」では、地震に伴い大規模かつ長時間に及ぶ停電が発生しており、「停電からの復旧後の再通電時に出火する、いわゆる『通電火災』」の発生が懸念される、と説明されています。ポイントは、火が出るタイミングです。地震や台風の「そのとき」ではなく、いったん止まった電気が戻ってきた「あと」に出火する——時間差のある火災、それが通電火災です。
名前は地震とセットで語られることが多いのですが、地震だけの話ではありません。NITE(製品評価技術基盤機構)は、台風の大型化や豪雨災害を背景に、雨漏りや浸水、落雷によりダメージを受けた家電製品による火災事故が発生していること、災害のあと停電が復旧した際に事故が発生する場合があることを注意喚起しています。台風・大雨・水害の停電でも、「電気が戻る瞬間」は同じようにやってきます。
なお、通電火災が起きる場所は主に家の中の配線や電気製品で、屋内の電気設備の点検・操作は当サイトでは扱いません。このページでは、公式機関の呼びかけを出典つきで紹介することと、電柱・配電網の側から見た「電気はどう戻ってくるのか」を整理することに徹します。
なぜ「電気が戻る瞬間」に火が出るのか
大きな地震の揺れがおさまったとき、家の中は停電する前と同じではありません。家具が倒れ、電気ストーブの上にカーテンや洗濯物が落ち、配線が家具の下敷きになっている——そこへ、電気が戻ってきます。
消防庁の白書では、具体的に想定される通電火災のメカニズムとして、次の3つが挙げられています。
- 「転倒した家具の下敷きになり損傷した配線などに再通電し、発熱発火する」
- 「落下したカーテンや洗濯物といった可燃物がヒーターに接触した状態で再通電し、着火する」
- 「転倒したヒーターや照明器具(白熱灯など)が可燃物に接触した状態で再通電し、着火する」
共通するのは、「停電している間は、何も起きない」ことです。配線が傷んでいても、ヒーターに可燃物が触れていても、電気が流れていなければ火は出ません。被害が表に出るのは、電気が戻った瞬間からです。しかも消防庁の白書では、通電火災が発生した場合、住民が避難所等へ避難しており、出火時の初期消火が行えないといったおそれがあることも指摘されています。水害で浸水した機器や落雷で傷んだ機器にも同じ構図があり、のちほど「水害のあとの通電火災」で見ていきます。
電気は、無人の家にも自動で戻ってくる — 復旧のしくみから
ここからが、電柱の図鑑らしい話です。停電からの復旧は、送配電会社の側でどう進むのでしょうか。中部電力パワーグリッドの解説では、まず変電所に近いエリアから順番に電気を流して停電原因のあるエリアを絞り込み、故障した設備の復旧作業や原因の除去を行って、すべての停電を復旧する流れが説明されています。関西電力送配電では、停電の原因区間を自動的に検出し、原因区間以外へ短時間で自動的に電気を送る「配電自動化システム」が紹介されています。電気の通り道を区間ごとに区切る柱上開閉器が、この切り分けを支えています。
さらに、原因がすでに通り過ぎている場合のために、自動で送電をやり直すしくみもあります。関西電力送配電の解説では、停電が起きると変電所内のスイッチが自動的に遮断され、停電発生から1分後に自動的にスイッチが入って再び送電が開始される流れが紹介されています。木の枝の一時的な接触のような原因なら、これでそのまま復旧します。このしくみは「一瞬だけ停電してすぐ戻るのはなぜ?」でくわしく取り上げています。
ここで、気づいてほしいことがあります。この復旧の流れは、一軒一軒の家の中の様子を確かめてから進むものではない、ということです。送配電会社が確認・修理するのは配電網の側で、それぞれの家の中で何が起きているかまでは分かりません。そのため、ブレーカーが入ったままの家であれば、送電の再開とともに、家の中の配線や機器にも電気が流れます。内閣府の資料でも「地震で停電が生じていても、避難をされている間に、電気が復旧した留守宅で電気火災が発生する場合があります」と説明されています。
誤解しないでほしいのは、早く戻ることが悪いのではない、という点です。停電が長引けば、それ自体がくらしと安全を脅かします。無事な区間から一刻も早く電気を戻す——そのしくみの価値は変わりません。そのうえで、「電気は自動で戻ってくる」からこそ、受け取る家の側の備えが呼びかけられている。この因果を、このあとの章で見ていきます。
一瞬だけ停電してすぐ戻るのはなぜ? — 瞬時電圧低下と自動再送電 →台風と停電 — なぜ起きる?復旧はどう進む? →柱上開閉器(図鑑) →
阪神・淡路大震災の教訓
通電火災という言葉が広く知られるきっかけになったのが、1995年1月の阪神・淡路大震災です。内閣府の「大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会」の報告書概要では、阪神・淡路大震災では出火原因が確認された139件の火災のうち電気火災が85件(約6割)、東日本大震災でも同じく110件のうち71件(約6割強)だったと整理されています。
消防庁の白書でも「近年の大規模地震発生時においては電気に起因する火災が多く発生している」とされ、東日本大震災における本震による火災では「原因の特定されたもののうち過半数が電気に起因したものであった」と説明されています。火災と聞くと炎や火の気をまず思い浮かべますが、大規模地震では、原因が確認された火災のうち電気に起因するものが過半を占めていた——これが、ふたつの震災が残したデータです。
この教訓を受けて、国では内閣府・消防庁・経済産業省が事務局となった検討会が開かれ、感震ブレーカーの性能評価や普及の取組が進められてきました。京都市消防局のように「地震の時は“通電火災”にご注意を!」と呼びかける自治体の消防局もあります。この流れが、最後の「備え」の章につながります。
水害のあとの通電火災 — 浸水した機器に電気が戻るとき
台風や大雨では、停電と浸水が同時に起きることがあります。水が引いて、電気が戻ってきた——そのときに注意が呼びかけられているのが、浸水した電気製品です。
NITEは、災害による雨漏り・浸水などで「水がかかったり水に浸かったりした家電製品は、内部に水が残っていたり、泥や塩分などの異物が付着していたりすることで、火災を引き起こすことがあります」と注意喚起していて、浸水した家電製品に通電したことで発火する事故の再現実験映像も公開しています。プレスリリースでは、外観上は乾いても内部に水が残っていたり、水に混ざった泥や塩分などの異物が内部に浸入して付着したりすることで、使用再開時に不完全燃焼や火災を引き起こすおそれがある、と説明されています。見た目が乾いていても安心できない、というところがこの話の怖いところです。
落雷で傷んだ機器にも、似た構図があります。NITEは、落雷で機器が損傷していた場合、通電が再開された際に発火などに至るおそれがあると説明しています。雷が停電を起こすしくみは「雷で停電するのはなぜ?」にまとめています。
浸水や落雷のあとの機器について、NITEは、そのまま使用せず、慎重に動作確認を行い、異常があった場合には「直ちに使用を中止し、メーカーや販売店にご相談ください」と呼びかけています。個々の機器が使えるかどうかの判断は、当サイトでは扱いません。メーカーや販売店の案内に従ってください。
備え — 公式の呼びかけを、そのまま知っておく
最後に、備えの話です。冒頭でお断りしたとおり、当サイトは電柱と配電設備の図鑑で、屋内の電気設備の操作手順は扱いません。そこでこの章では、公的機関や電力関係の団体・会社が公式に出している呼びかけを、言葉を変えずにそのまま紹介します。具体的な操作や順番は、必ず各機関・各社・自治体の案内に従ってください。
- 消防庁(令和2年版 消防白書): 地震直後の行動として「停電中は電化製品のスイッチを切るとともに、電源プラグをコンセントから抜く」「避難するときはブレーカーを落とす」が、電気やガスの復旧後については「再通電後は、しばらく電化製品に異常(煙、におい)がないか注意を払う」が挙げられています。
- 中部電力パワーグリッド: 台風のときの注意点として「停電復旧時、電気の消し忘れによる災害を防ぐため、分電盤のブレーカーを切ってください」と案内しています。
- 電気事業連合会: 「避難の際など災害時に家を空ける場合にはブレーカーを切りましょう」と呼びかけています。
- 京都市消防局: 「通電火災を防ぐためには、避難時にブレーカーを遮断することや、停電中に電気機器の電源プラグをコンセントから抜くことなどが効果的です」と解説しています。
とはいえ、大きな揺れの直後にとっさに行動できるとは限りませんし、外出中なら手の打ちようがありません。そこで内閣府や消防庁が普及を呼びかけているのが「感震ブレーカー」です。内閣府は、感震ブレーカーを「地震時に設定以上の揺れを感知した時に電気を自動的に止める器具」と説明し、その設置を「不在時やブレーカーを落として避難する余裕がない場合に電気火災を防止する有効な手段」と位置づけています。消防庁の白書でも、事前の対策として感震ブレーカーの設置が挙げられています。検討会の資料では分電盤タイプ・コンセントタイプ・簡易タイプといった種類が整理されており、内閣府の広報誌では、購入や設置のための助成制度を設けている自治体もあると紹介されています。あわせて内閣府は、生命の維持に直結するような医療用機器を使っている場合は停電に対処できるバッテリー等を備えること、夜間の照明確保のために停電時に作動する足元灯や懐中電灯などを常備することも案内しています。「電気を自動で止める備え」は、「急に止まっても困らない備え」とセットだということです。当サイトでは特定の製品の紹介・比較は行いません。製品選びや工事については、内閣府の資料や自治体の案内、お近くの電気工事店に相談してください。なお、停電や火災にともなう損害の賠償・保険・補償は専門の窓口の領域のため、このサイトでは扱いません。お住まいのエリアの停電情報ページを電気があるうちにブックマークしておくこともおすすめです。探し方は「停電情報の調べ方」にまとめています。
よくある質問
「電気火災」と「通電火災」は何が違うのですか?
電気火災は、電気に起因する火災の総称として使われる言葉です。内閣府の検討会資料でも「電気に起因する火災」を電気火災として整理しています。一方、通電火災はそのうち、消防庁の白書で「停電からの復旧後の再通電時に出火する、いわゆる『通電火災』」と説明されているとおり、停電がいったん起きて、電気が戻るタイミングで出火するものを指します。地震や台風の最中ではなく、復旧のあとに起きる時間差が特徴です。
停電しなかった場合や、避難しない場合もブレーカーを切るべきですか?
状況によって考え方が分かれるため、当サイトでは判断をお示しできません。公式の呼びかけは、消防庁の白書の「避難するときはブレーカーを落とす」、電気事業連合会の「避難の際など災害時に家を空ける場合にはブレーカーを切りましょう」のように、避難で家を空けるときを前提にした形で出ています。それ以外の場面でどうするかは、お住まいの自治体や送配電会社、契約中の電力会社の案内に従ってください。屋内の電気設備の操作は当サイトでは扱いません。
感震ブレーカーがあれば通電火災は防げますか?
内閣府は感震ブレーカーの設置を「不在時やブレーカーを落として避難する余裕がない場合に電気火災を防止する有効な手段」と位置づけています。一方で京都市消防局は、感震ブレーカーは通電火災には効果的だが、地震による火災の原因は通電火災だけではない、と解説しています。また内閣府の資料では、感震ブレーカーを設置した家でも、避難先から帰宅して電気を使用する際には屋内の点検が必要とされています。設置すれば終わり、ではなく、ほかの備えと組み合わせる前提の装置と考えるのがよさそうです。
太陽光発電や蓄電池がある家の停電・復旧はどうなりますか?
太陽光発電や蓄電池、電気自動車の給電設備など、家側の個別の設備については、機器の構成や設定によって停電時・復旧時の動きが異なるため、当サイトでは扱いません。お使いの機器のメーカーや施工店の案内、取扱説明書、契約中の電力会社の案内で確認してください。なお、切れた電線や垂れ下がった電線を見つけたときの対応は、設備の有無にかかわらず同じです。絶対に近づかず、その地域の送配電会社へ連絡してください。
あわせて読みたい
参考にした公開情報
- 消防庁「【コラム】地震火災対策について」(令和2年版 消防白書)(外部リンク・新しいタブで開きます)
- 内閣府「大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会」(外部リンク・新しいタブで開きます)
- 内閣府「大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会報告書について(概要)」(外部リンク・新しいタブで開きます)
- 内閣府「感震ブレーカーの取扱いの留意点」(外部リンク・新しいタブで開きます)
- 内閣府「広報ぼうさい」平成28年夏号 特集3「地震に備える」(外部リンク・新しいタブで開きます)
- 京都市消防局「地震の時は“通電火災”にご注意を!」(外部リンク・新しいタブで開きます)
- NITE「浸水した家電製品から発火」(注意喚起動画・ポスター)(外部リンク・新しいタブで開きます)
- NITE「自然災害時にまさかの製品事故!?~停電時のCO中毒にも注意!~」(外部リンク・新しいタブで開きます)
- 関西電力送配電「復旧のしくみ・復旧の流れ」(外部リンク・新しいタブで開きます)
- 中部電力パワーグリッド「停電復旧のしくみと停電理由」(外部リンク・新しいタブで開きます)
- 中部電力パワーグリッド「台風のときは(災害時の注意点)」(外部リンク・新しいタブで開きます)
- 電気事業連合会「台風・水害のとき」(外部リンク・新しいタブで開きます)
- 電気事業連合会「各エリアの停電情報・電力需給関連情報」(外部リンク・新しいタブで開きます)