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「着雪注意報」が出たら電線で何が起きている? — 着雪・着氷・雨氷のちがいと、停電の道すじ

最終更新: 2026-09-20/公開情報をもとに作成しています

雪が降った朝、見上げた電線がいつもより太く見えたことはありませんか。白い筒のようなものが線に巻きついていて、しばらくすると、ばさりと落ちて元の細さに戻る。冬の天気予報では、その電線を名指しした注意報が出ることがあります。「着雪注意報」です。名前だけでは何に気をつければよいのか分かりにくい注意報でもあります。

気象庁の説明を読むと、この注意報が何を心配しているのかがはっきり書かれています。着雪注意報は、著しい着雪により災害が発生するおそれがあると予想したときに発表され、具体的には、雪が付着することによる電線等の断線や送電鉄塔等の倒壊等の被害が発生する(気温0℃付近で発生しやすい)おそれのあるときに発表される、とされています。電線と鉄塔が、定義の一文に名指しで出てきます。着雪注意報は、はじめから頭上の線と鉄塔のほうを見ている注意報なのです。

このページでは、着雪注意報が出た夜、線の上で何が起きているのかを公開情報で整理します。まぎらわしい「着雪」「着氷」「雨氷」「凍雨」の区別、湿った雪が電線に巻きついて太っていくしくみ、雪の日に停電へつながる三つの道すじ、そして電線に取り付けられている雪のための部品まで。いっぽうで、雪下ろしのやり方、停電に備える品物、電気の需給の話は扱いません。

「着雪注意報」が名指ししているのは電線と鉄塔 — 大雪・着氷注意報とのちがい

まず、注意報の文面から見ていきます。気象庁の「気象警報・注意報の種類」には、着雪注意報について、著しい着雪により災害が発生するおそれがあると予想したときに発表するとあり、そのうえで「雪が付着することによる電線等の断線や送電鉄塔等の倒壊等の被害が発生する(気温0℃付近で発生しやすい)おそれのあるとき」と具体的に書かれています。被害の対象が電線と送電鉄塔であること、起きやすい気温の条件までが、定義の一文に収まっています。

よく混ざるのが大雪注意報です。こちらは同じページで、降雪や積雪による住家等の被害や交通障害など、大雪により災害が発生するおそれがあると予想したときに発表する、と説明されています。軸がちがいます。大雪注意報が見ているのは「降る・積もる」ことによる被害で、着雪注意報が見ているのは「付く」ことによる被害です。積もった量がたいしたことのない夜に、着雪注意報だけが出ることもあります。

「付く」側の注意報は、もうひとつあります。着氷注意報です。気象庁は、水蒸気や水しぶきの付着・凍結による通信線・送電線の断線、船体着氷による転覆・沈没等の被害が発生するおそれのあるときに発表する、と説明しています。ここでも通信線と送電線が名指しされています。付くのが雪なのか、水なのか。そこが着雪注意報と着氷注意報の分かれ目です。

隣に並ぶ紛らわしい注意報も片づけておきます。風雪注意報は、雪を伴う強風により災害が発生するおそれがあると予想したときに発表されるもので、気象庁は「大雪+強風」の意味ではないと明記しています。融雪注意報のほうは、積雪が融解することによる土砂災害や浸水害が発生するおそれがあるときのもので、雪が融けたあとの話です。

なお、当サイトでは天気の予報・予想は行いません。これから雪がどうなるかについては、気象庁の発表を確認してください。

着雪・着氷・雨氷・凍雨 — 同じ「氷が付く」でも、入口がちがう

冬の天気の言葉には、似ているのに中身がちがうものが並んでいます。着雪、着氷、雨氷、凍雨。どれも「冷たいものが付く・凍る」話ですが、何が付くのか、いつ凍るのかが違います。

着雪は、気象庁の予報用語で「湿った雪が電線や樹木などに付着する現象」と定義されています。ポイントは「湿った」のほうです。同じページでは、湿り雪を含水率の大きい雪と説明し、大きな雪片となりやすく、着雪の被害を起こしやすいと書いています。乾いた雪は含水率の小さい雪で、風で舞い上がりやすいとされています。

着氷は「水滴が地物に付いて凍結する現象」です。気象庁は、海上で波しぶきや雨・霧が船体に付いて凍る現象を特に「船体着氷」と呼ぶと説明しています。付くのは雪ではなく水です。着氷注意報が挙げているのも、水蒸気や水しぶきの付着・凍結による断線でした。

雨氷は、少し扱いが違います。気象庁の予報用語のページを探しても「雨氷」という項目は見当たりません。観測の側には扱いがあり、「過去の気象データ検索」の記号の説明には、大気現象のひとつとして「雨氷」の記号が載っていて、同じ表の中に「着氷性の雨(過冷却の雨)」という言い方もあります。ただし、どちらも記号の名前で、定義の文は付いていません。そこでこのページでは、長野県林業総合センターが公開しているミニ技術情報の定義を使います。過冷却状態の雨滴が樹木や電線、建物等の地表の物体に付着して凍結し、その物体が透明な氷で覆われる現象を雨氷現象という、と説明されています。樹木の枝や電線などに細いツララが多数形成されるのが特徴だ、とも書かれています。

なぜ、落ちてくるまで凍らずにいられるのか。同じ資料は、過冷却を、水が0℃以下になっても凍らない状態と説明しています。上空に0℃以上の暖かい空気の層(逆転層)が存在し、地表付近の気温が0℃以下、という特異な気象条件のときに、雨滴が冷やされて過冷却状態となる、とされています。過冷却の雨滴が枝葉や電線などに付着したとき、その付着した物体が0℃以下であれば、雨滴が凍って雨氷が生じるといわれている、と書かれています。

最後に凍雨です。気象庁の予報用語では「雨滴が凍って落下する透明の氷の粒」と定義され、透明な氷粒であるが、予報文では「雪」として扱うと備考が付いています。雨氷との違いは、凍った場所とタイミングです。凍雨は落ちてくる時点ですでに氷で、当たっても粒のまま。雨氷は落ちてくるあいだは液体のままで、触れてから凍ります。

雨氷もまた、電線にとっては困りものです。長野県林業総合センターの資料は、鉄道の架線や電線に着氷すると、氷の重みで架線や電線が断線してしまい、停電したり鉄道が運行停止するなどの被害発生要因となる、と書いています。

入口が複数あることは、研究の側からも整理されています。電力中央研究所の研究者らが日本雪氷学会誌に寄せた解説では、送電設備への着氷雪現象が、氷点以上の気温で降雪が付着する「湿型(毛管力型)着雪」、氷点以下の気温での降雪でも風が弱い条件で密度の低い着雪が生じる「乾型(焼結型)着雪」、過冷却の雨滴(着氷性の雨)が付着して着氷が生じる「降水(雨氷型)着氷」、風に運ばれた雲や霧に含まれる過冷却状態の水滴が衝突することで生じる「雲中(雨氷型・粗氷型・樹氷型)着氷」などに区分されると説明されています。

なお、長野県林業総合センターの資料は、雨氷現象は県内では中信・東信地区での発生が多く、全国的にみても長野県での発生例が多くなっている、と書いています。長野県の資料が長野県について述べたもので、全国の分布ではありません。

  • 着雪 … 湿った雪が付く(気象庁「湿った雪が電線や樹木などに付着する現象」)/白くふくらんだ塊・筒状/気象庁の予報用語に定義があり、着雪注意報がある
  • 着氷 … 水滴・水しぶき・水蒸気が凍って付く(気象庁「水滴が地物に付いて凍結する現象」)/氷の層/気象庁の予報用語に定義があり、着氷注意報がある
  • 雨氷 … 過冷却のまま落ちてきた雨滴が、0℃以下の物に付いて凍る(長野県林業総合センター)/透明な氷に覆われ、細いツララが多数/雨氷という名前の注意報は無い(気象庁の予報用語に項目は無く、観測の記号の説明に大気現象「雨氷」と「着氷性の雨」が載る。定義文は無い)
  • 凍雨 … 落ちてくる時点ですでに凍った透明の氷の粒(気象庁)/粒のまま/気象庁の予報用語に定義があり、予報文では「雪」として扱われる

気象庁の予報用語には「雨氷」という項目が見当たらないため、このページでは長野県林業総合センターの公開資料の定義を使っています。気象庁側にも、観測の記号の説明に大気現象「雨氷」と「着氷性の雨(過冷却の雨)」が載っていますが、いずれも記号の名前で、定義の文は示されていません。

配電線(図鑑)

なぜ電線の上でぐるぐる巻いて太るのか — 「より」に沿って、回りながら育つ

雪の朝に見える「太くなった電線」は、雪がただ上に積もった姿とは限りません。北海道電力ネットワークは、電線に湿った雪が付着すると、電線の“より”に沿って雪が回転移動をしながら成長することがある、と説明しています。さらに、雪が全体に付着した電線は重みでねじれやすく、雪の回転成長を促す、とも書かれています。積もるのではなく、回りながら巻きついていくわけです。

ここで出てくる「より」は、電線の作りのことです。架空の電線は一本の太い棒ではなく、細い素線を何本も撚り合わせて一本にまとめてあり、表面にはらせん状の細い溝が走っています。この溝が、雪にとっては足がかりであり、すべり台にもなります。

雪の量が増えると、形が変わります。電力中央研究所の研究者らが日本雪氷学会誌で解説しているところでは、電線への着雪量が過大になる場合には、電線を筒状に着雪体が覆うことが多く、これを筒雪と呼ぶ、とされています。長い径間を有する送電線はねじれやすく、付着した雪に作用する重力(偏心荷重)や空気力により電線がねじられながら、筒雪が形成される、と書かれています。

付きはじめの形は、風の強さで二通りに分かれます。同じ解説では、一つ目は電線の側面から降雪粒子が付着するタイプで、比較的風が強い条件下において発生し、二つ目は電線の上部に降雪粒子が載るタイプで、風が弱い条件下において発生する、と説明されています。観測結果に基づくと、二つの着雪タイプの閾値は風速3m/s程度となる、とも書かれています。線の上に白いものが載っているのか、線を包むように付いているのか。見分けの手がかりは、そのあたりです。

筒になっていく道すじも、二つあります。同じ解説によれば、素線の凹凸がある送電線では、素線の撚りに沿って着雪体が滑ることがあり、着雪体の融解が進むほど滑りやすくなるとされています。ただし移動の速度は比較的ゆっくりなので、電線がねじれやすい条件下では、電線のねじれを伴う筒雪化が先行しやすい、と説明されています。雪の側が滑って回るか、電線の側がねじれて回るか。両方が合わさって、白い筒ができあがります。

条件をまとめると、気温は着雪注意報の定義文にあるとおり0℃付近、雪は湿った(重い)雪、というのが起きやすい条件になります。風は、あるかないかというより、強いか弱いかで付きかたが変わります。学会誌の解説でも、乾雪や氷粒状の降水粒子は強風下では着雪しないとされています。

どこで起きるのかも気になるところです。気象庁は、冬は北西の季節風が吹いてシベリアからの寒気を運び、この冷たい季節風が山に当たって上昇気流となり雲が発生するため日本海側では雪の日が多い、と説明しています。ただし「雪の日が多い」ことと「着雪の被害が起きる」ことは別の話です。学会誌の解説は、国内では大半の地域で降雪がみられ、北海道から九州までの広い範囲で雪害の発生事例があると書いています。

電線に雪が巻きついて太っていくようすを、3 コマの横ならびで示したイメージ図。各コマは上が電線の断面図、下が側面図の 2 段になっている。1 コマ目「付きはじめ」では、細い素線を 7 本たばねた電線の断面の上側に白い雪が小さく載り、側面図では表面の螺旋の溝に雪が点々と付いている。2 コマ目「回りながら育つ」では、断面図の雪が電線の上半分を帯のように覆い、そのまわりに雪が回る向きの円弧矢印が描かれ、側面図では白い雪の帯が撚りの溝に沿って螺旋状に伸びている。3 コマ目「筒雪」では、断面図で電線を覆う雪の円が元の電線の 2〜3 倍ほどの太さになって「太くなる」と添えられ、側面図では筒状の白い塊が径間いっぱいに続いて、電線が下へ大きく垂れ下がっている。下の黄色い帯には、気温0℃付近で発生しやすいこと、付くのは湿った重い雪で乾いた雪は風で舞い上がりやすいこと、風が弱いと電線の上に載り強いと側面から付き、分かれる目安が風速 3 メートル毎秒程度とされていることを書いている。3 コマ目の右上には、案内役のスズメのでんチュンが、電線から離れた小さな止まり木に名札つきで小さく描かれている。いちばん下の注記には、イメージ図であること、もとにした公開情報、筒雪という呼び名、電線や電柱に近づかない注意を書いている。
電線に雪が巻きついて太るまで(イメージ図)出典: 電柱図鑑オリジナル図解(公開情報をもとに作成)

配電線(図鑑)送電線(図鑑)

雪の日に停電する三つの道すじ — 垂れる・揺れる・かかる

電線に雪が巻きついたからといって、そのまま停電になるわけではありません。ただ、そこから停電につながる道すじが、公開されている資料をたどると見えてきます。垂れる、揺れる、かかる、の三つです。

一つ目は、重みで垂れる道すじです。北海道電力ネットワークは、雪の回転成長の結果として、送電線を支える鉄塔に負担がかかるばかりではなく、その重みで垂れ下がった電線が他の電線や樹木と接触し、停電につながる場合がある、と説明しています。筒になった雪は見た目以上に重く、線は下へ下へとたわみ、もともと確保されていた下の線や樹木との距離が縮まったところで、接触が起きます。

もうひとつ、雪が落ちた瞬間にも注意が要ります。電力中央研究所の研究者らの学会誌の解説には、電線が氷雪の重みで大きく垂下した際、もしくは電線に付着した氷雪が一斉に脱落して電線が跳ね上がった際(スリートジャンプと呼ばれる)に、他の電線と接近して短絡事故が生じることもある、と書かれています。内閣府が公開している降雪対応の手引きも、気象庁による分類として、着雪害を、電線等に降雪が付着し、雪の重みあるいは着雪が脱落するときの電線のはね上がりにより、電線の切断・短絡や電柱・支柱等の傾斜・折損などを起こす災害だとしています。気象庁の予報用語も、着雪害を「電線などに降雪が付着することによって起こる災害」と定義しています。

二つ目は、風で揺れる道すじです。北海道電力ネットワークは、雪や氷が付いた送電線に風が吹き付けると、電線が上下に振動するギャロッピングと呼ばれる現象が起こることがあるとし、これが大きくなり電線同士が異常に接近・接触すると、送電線がショート(短絡)して停電につながる場合がある、と説明しています。

なぜ風で上下に揺れるのか。電力中央研究所の研究者らの学会誌の解説では、電線に着氷雪が生じるとその断面形状は非対称となり、このような電線が風を受けると、風と同じ方向の抗力のみでなく、風と直角方向の揚力も作用する、と説明されています。ただし、揚力が作用すればいつもギャロッピングが発生するわけではなく、断面形状や、着氷雪の向きと気流の交差する角度がある条件を満たすときに、自励的に振動が成長する、とも書かれています。丸かった線が雪でいびつな形になり、そこに風が当たることで、揺れが自分で育っていくわけです。

三つ目は、雪をかぶった枝や木がかかる道すじです。関西電力送配電は停電の原因を挙げたページで、雪の影響について、雪の重みで樹木が倒壊し、電線に接触することで停電が発生すると説明し、多発時期を冬としています。経済産業省の関東東北産業保安監督部東北支部も、強風や雪の重みによる倒木等により、送・配電線の断線や、支持物の損傷等が発生し、停電発生の大きな要因となる場合がある、と案内しています。枝が線にかかっているのを見つけたときの連絡先は、別の記事にまとめてあります。

どれが多いのかについては、送電線に限った話ですが、学会誌の解説が触れています。雪崩や着雪・冠雪した樹木の倒壊などに起因する被害もあるが、架空送電線における雪害の大半は、雪や氷が電線・がいしなどへ付着することによって発生する、とされています。極端なところでは、重着雪は、電線や鉄塔に過大に氷雪が付着することによって、電線の断線や鉄塔の損壊を引き起こす、と書かれています。着雪注意報の定義文が「電線等の断線や送電鉄塔等の倒壊等」と名指ししているのは、この最悪の側です。

三つとも「そうなることがある」という説明であって、雪が降れば必ず起きるという話ではありません。

雪の日に停電が起きる三つの道すじを、電柱 2 本と電線を正面から見た 1 枚にまとめたイメージ図。左右に上が細く下が太い電柱が立ち、いちばん上に架空地線、その下に高圧配電線が 3 本、さらに下に低圧配電線が 2 本、それぞれラベル付きで水平に渡っている。がいしは 1 本の線に 1 個ずつ付き、腕金は高圧用と低圧用の 2 段。左寄りの径間では、高圧配電線の 1 本が白い筒状の雪で太くなって大きく垂れ下がり、下の低圧配電線に近づいたところを赤橙の点線で囲み、そのすぐ下に「雪が落ちると跳ね上がることもある」の細字と上向きの矢印を添えている。中央の径間では、左から吹く「風」の矢印 3 本と、上下の振れ幅をあらわす破線の包絡線、「上下に揺れる」のラベルが描かれ、振れた線が下の線に近づいた場所を赤橙の点線で囲んでいる。右寄りでは、雪をかぶって傾いた樹木の枝が低圧配電線にかかり、接触したところを赤橙の点線で囲んでいる。左の電柱のてっぺんには、案内役のスズメのでんチュンが名札つきでいて、雪や垂れた線には触れていない。地面の線の下には「1 重みで垂れて、下の線や木に近づく」「2 風で上下に揺れて、線どうしが近づく」「3 雪をかぶった枝や木が、線にかかる」の 3 つのバッジが並んでいる。その下の黄色い帯には、垂れ下がった電線が他の電線や樹木と接触し、停電につながることがある(北海道電力ネットワーク。同社の説明は送電線についてのもの)、雪の重みで樹木が倒壊し電線に接触して停電(関西電力送配電)と書いている。いちばん下の注記には、イメージ図であること、2 の揺れがギャロッピングと呼ばれること、雪が落ちて電線が跳ね上がる現象がスリートジャンプと呼ばれること、倒木が復旧の足止めにもなること、切れた線や垂れた線に近づかない注意を書いている。
雪の日に停電する三つの道すじ(イメージ図)出典: 電柱図鑑オリジナル図解(公開情報をもとに作成)
  • ① 重みで垂れる … 筒状に育った雪の重みで電線が大きく垂れ下がり、下の線や樹木に近づく。雪が一斉に落ちて跳ね上がったときにも、ほかの線に近づくことがある(北海道電力ネットワーク・電力中央研究所ほか)
  • ② 風で揺れる … 雪や氷が付いた電線は断面が非対称になり、風を受けると上下に振動する。揺れが大きくなって電線どうしが近づくと、ショート(短絡)につながる(北海道電力ネットワーク・電力中央研究所ほか)
  • ③ 枝・木がかかる … 雪の重みで樹木が倒れ、電線に接触して停電が起きる。倒木は復旧の足止めにもなる(関西電力送配電・経済産業省 関東東北産業保安監督部東北支部)

電線に木の枝がかかっていたら — 連絡先と知っておきたいこと電線が垂れ下がっている・切れている — 触らずに、どこへ連絡する?台風と停電 — なぜ起きる?復旧はどう進む?

電線には、雪のための部品が付いている — 難着雪リング・ねじれ防止ダンパー・相間スペーサ

ここまで読むと、雪の日の電線はずいぶん分が悪く見えてきます。実際には、そうならないための部品が線のほうに付いています。北海道電力ネットワークが公開しているのは三つです。

一つ目は難着雪リングです。同社は、雪の回転成長を防止するため、電線の“より”に沿って雪が移動しにくくなる「難着雪リング」を取り付けている、と説明しています。電力中央研究所の研究者らの学会誌の解説によれば、難着雪リングを設置すると、筒雪の形成に寄与する着雪体の電線の撚りに沿った滑りを防ぐことで着雪量の低減効果があり、また着雪体の径間方向の連続性を分断することにより、雪相互の支持作用を阻害し、着雪体が成長途中で脱落しやすくなる、とされています。雪が滑って回る道を、途中で区切ってしまう部品です。

二つ目はねじれ防止ダンパーです。電線のねじれを抑えるための部品で、同社のページには「ダンパー:重りのこと」という注記が添えられています。電線がねじれることで筒雪が育つのなら、ねじれにくくすればよい、という考え方です。

三つ目は相間スペーサです。同社は、雪や氷が付着しやすい地域にある送電線には「相間スペーサ」という棒状の設備を取り付けて電線間の距離を保ち、電線同士の接触を防いでいる、と説明しています。架空送電線のギャロッピングについて日本雪氷学会誌に載った解説でも、相間スペーサは、磁器がいしや高分子がいしを用いて、機械的に電線の相間を確保し、電気的短絡事故を防止するものだとされています。揺れを止めるのではなく、揺れても線どうしがくっつかないようにする守り方です。

ただし、どれも万能ではありません。電力中央研究所の研究者らの学会誌の解説は、難着雪リングについて、湿型着雪時において風が強いほど効果を発揮することが確認された一方、乾型着雪時には効果が確認されなかった、と書いています。また、ねじれを抑制する対策では、着雪量が低減される反面、着雪が一方向に発達しやすくなることで、ギャロッピングの発生を助長する可能性も指摘されている、とも述べられています。片方を抑えると、もう片方が出てくることがある。雪の対策には、そういう難しさがあるようです。

送電線(図鑑)送電鉄塔(図鑑)

雪の日の復旧には、雪特有の足止めがある

雪の日に停電が起きたとき、復旧には雪ならではの足止めが加わります。経済産業省の関東東北産業保安監督部東北支部は、倒木・積雪等により道路が塞がれることで、進入困難箇所が発生し、これが停電復旧に時間を要する要因となる場合がある、と案内しています。さらに、大規模な土砂崩れや、道路への倒木等が複数箇所で発生した場合には、除去作業に数日を要することもある、とも書かれています。壊れた設備を直す前に、そもそも現場まで行けるのか、という段階があるわけです。復旧がどういう順番で進むのか、「隣は点いたのに、うちだけ遅い」と感じるのはなぜかは、別の記事にまとめてあります。

停電の復旧時間はどれくらい? — 復旧の順番と「うちだけ遅い」理由を、電柱の上から見る停電情報の調べ方 — 全国の停電情報ページまとめ

雪下ろしで電線を切ってしまったら — 触らずに連絡する

雪の季節に、電線とかかわってしまう場面がもうひとつあります。雪下ろしです。東北電力ネットワークは、雪下ろしの際に、ご自宅への引込線等を切ってしまうおそれもあるとしたうえで、切れた電線に触れてしまい感電する危険もあるので、万一電線を切ってしまった場合はすぐに連絡してほしい、と呼びかけています。切れたり垂れ下がったりしている電線を見つけたときも同じで、絶対に近寄らず、すぐに連絡するよう案内されています。

やることは一つです。触らずに、その地域の送配電会社へ連絡すること。全国のエリアごとの窓口の考え方と、連絡するときに役立つ電柱番号の読み方は、別の記事にまとめてあります。

電話番号は変わることがあるため、このページには載せていません。最新の窓口は各社の公式ページ(記事末尾の参考情報)から確認してください。なお、雪下ろしそのもののやり方は、このサイトでは扱いません。お住まいの自治体の案内に従ってください。

電線が垂れ下がっている・切れている — 触らずに、どこへ連絡する?電柱番号の調べ方

雪の朝の観察 — 太くなった線、白い筒、冬の電柱

雪が降った翌朝は、電線を見上げるのにいい日です。いつもより太く見えないか。線の上に雪が載っているだけなのか、それとも線を包むように白い筒ができているのか。風の強さでこの二つが分かれると知ったあとだと、同じ景色が少し違って見えます。しばらくすると雪は落ちて、線は元の細さに戻ります。

付くのは湿った(重い)雪のほうなので、さらさらの乾いた雪の日には、同じように降っていても線はあまり白くなりません。どんな雪の日に線が太くなるのか、冬のあいだに見比べてみると、違いが見えてきます。

ただし、見る場所には気をつけてください。電線の下には立たないこと。ふくらんだ雪がいつ落ちるかは分かりませんし、落ちてくる雪の塊は見た目より重いものです。電柱にも電線にも近づかない、触らない。垂れ下がっている線や切れている線を見つけたら、近寄らずに連絡してください。

冬の停電には、雪のほかにもうひとつ「冬季雷」という系統がありますが、ここでは雪の話だけを扱いました。冬の雷は雷の記事の『冬の日本海側に落ちる「冬季雷」』の節へどうぞ。停電への備えそのものは、台風の記事と防災月間の記事にまとめてあります。冬の電柱観察のたのしみかたは、でんチュンの観察ごよみの冬のページからどうぞ。

雷が電柱に落ちたらどうなる? — 冬の日本海側に落ちる『冬季雷』の節へ電線が垂れ下がっている・切れている — 触らずに、どこへ連絡する?台風と停電 — なぜ起きる?復旧はどう進む?9月はなぜ防災月間? — 台風・秋雨・塩害・雷、電気が止まりやすい月の備えでんチュンの観察ごよみ

よくある質問

天気予報の「着雪」とは何ですか?

気象庁の予報用語では「湿った雪が電線や樹木などに付着する現象」と定義されています。この着雪が著しくなり災害のおそれがあるときに出されるのが着雪注意報で、気象庁は被害の中身を「電線等の断線や送電鉄塔等の倒壊等」、起きやすい条件を「気温0℃付近」と書いています。付くのは湿った雪のほうで、気象庁は湿り雪を含水率の大きい雪と説明し、大きな雪片となりやすく、着雪の被害を起こしやすいとしています。乾いた雪は含水率の小さい雪で、風で舞い上がりやすいとされています。

着雪注意報と大雪注意報の違いは何ですか?

見ている軸がちがいます。大雪注意報は、降雪や積雪による住家等の被害や交通障害など、大雪により災害が発生するおそれがあると予想したときに発表されるもので、「降る・積もる」ことによる被害を見ています。着雪注意報は、雪が「付く」ことによる電線等の断線や送電鉄塔等の倒壊等の被害を見ています。積もった量が多くない夜に、着雪注意報だけが出ることもあります。なお、並んで紛らわしい風雪注意報について、気象庁は「大雪+強風」の意味ではないと明記しており、雪を伴う強風による災害と、雪が舞って視界が遮られることによる災害への注意を呼びかけるものだとしています。

着氷と着雪の違いは何ですか?

付くものがちがいます。着雪は「湿った雪が電線や樹木などに付着する現象」で、雪そのものが付きます。着氷は「水滴が地物に付いて凍結する現象」で、付くのは水です。気象庁は、海上で波しぶきや雨・霧が船体に付いて凍る現象を特に「船体着氷」と呼ぶと説明しています。注意報の側でも分かれていて、着氷注意報は、水蒸気や水しぶきの付着・凍結による通信線・送電線の断線、船体着氷による転覆・沈没等の被害を挙げています。どちらも電線が名指しされている点は共通です。

凍雨と雨氷の違いは何ですか?

凍った場所とタイミングがちがいます。凍雨は、気象庁の予報用語で「雨滴が凍って落下する透明の氷の粒」と定義されていて、落ちてくる時点ですでに氷です(透明な氷粒ですが、予報文では「雪」として扱うと備考が付いています)。雨氷は、過冷却のまま落ちてきた雨滴が、樹木や電線、建物等に付着して凍結し、その物体が透明な氷で覆われる現象で、触れてから凍ります(長野県林業総合センター)。なお、気象庁の予報用語に「雨氷」の項目は見当たりません。観測の記号の説明には大気現象「雨氷」と「着氷性の雨(過冷却の雨)」が載っていますが、定義の文は付いていません。

雪で停電するのはなぜですか?

公開資料をたどると、道すじが三つ見えてきます。一つ目は、筒状に育った雪の重みで電線が垂れ下がり、下の線や樹木に近づくこと。雪が一斉に落ちて電線が跳ね上がったときにも、ほかの線に近づくことがあります。二つ目は、雪や氷が付いた電線は断面が非対称になり、風を受けて上下に振動し、線どうしが近づくとショート(短絡)につながること。三つ目は、雪の重みで樹木が倒れて電線に接触することです。どれも「そうなることがある」という説明で、雪が降れば必ず起きるわけではありません。

雪の日の停電は、復旧に時間がかかりますか?

雪ならではの足止めが加わる、というところまでは言えます。経済産業省の関東東北産業保安監督部東北支部は、倒木や積雪で道路が塞がれると進入困難箇所が生まれ、それが停電復旧に時間を要する要因となる場合がある、と案内しています。壊れた設備を直す前に、現場までたどり着けるかという段階があるわけです。どれくらいかかるかは状況によって変わります。復旧がどの順に進むか、「うちだけ遅い」と感じるときの見かたは、別の記事にまとめてあります。

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