くらしのガイド

電気はどこから来るの? — 近所の鉄塔から、発電所までさかのぼる

最終更新: 2026-09-05/公開情報をもとに作成しています

散歩の途中で、遠くに鉄塔が見えることがあります。4本脚の骨組みが野原や山のほうへ点々と続いていて、いちばん上には細い線。あの線はどこから来て、どこへ行くのでしょうか。言いかえると、電気はどこから来るのでしょうか。

答えを先に言うと、発電所から家庭までの電気の流れは、発電所 → 送電線 → 変電所 → 配電線 → 家 の5段です。発電所を出た電気が家に届くまでの道すじを、この記事では逆からたどります。発電所は遠くて見に行けませんが、送電線を支える鉄塔なら、近所で見上げられるからです。電気が届くまでに、どこをどう通っているのか。その道すじを、近所から順にさかのぼります。

数字や決まりは、送配電各社の公開ページと、法令の原文をもとにまとめました。電圧の段は会社や地域でちがうので、どこの例なのかを毎回添えています。出典は記事の最後にまとめてあります。調べものの手がかりにも使えます。

電気はどこから来るの? — 発電所から家庭までの電気の流れは5段

東京電力パワーグリッドの「電気の流れ」に、その答えが書かれています。水力・火力・原子力・再生可能エネルギー等の各発電所で発電した電気を、送電線、変電所、配電線などの電力設備を経て届けている、という説明です。順に並べると、発電所 → 送電線 → 変電所 → 配電線 → 家。これがいちばん短い答えです。

同じ順序は、ほかの公開ページでも案内されています。電気事業連合会の公開ページにも「各発電所で作られた電気は、送電線、変電所、配電線などを通り、皆さんのご家庭へ送られています」とあります。関西電力送配電の「おくりんの電気教室」も、発電所でつくられた電気が送電線・変電所・配電線などいろいろな設備を通って家まで届けられる、という書き方です。三者で並びが一致しているので、まずはこの5段を骨組みにします。

ただし、この記事はその道すじを逆からたどります。理由は単純で、発電所は遠くて見に行けないけれど、鉄塔なら近所で見上げられるからです。中部電力の「架空送電」には、電圧を高くして電気を送るため、鉄塔で地上から高いところに電線を支えて、がいしで絶縁する、とあります。鉄塔とは、そのための構造物です。

下の図が、この記事の骨格です。左が発電所、右が家。以降の節では、いま図のどのあたりを話しているのかを、そのつど示していきます。

発電所から家庭までの電気の流れを左から右へ一列に並べた段階図。左端の発電所でつくられた電気が矢印でいったん50万ボルトへ上げられ、超高圧変電所・一次変電所・二次変電所と進むごとに電圧が階段状に下がり、鉄塔が支える送電線を経て、配電用変電所で6,600ボルトになる。右端は電柱を拡大したインセットで、高圧配電線・柱上変圧器・低圧配電線の3点を示し、100ボルト・200ボルトに下がる場所が電柱の上であることが分かる。図の下辺には電圧の目盛りが付き、鉄塔の位置には「この記事の出発点」の印と、上流・下流を指す矢印が添えられている。
発電所から家庭に電気が届くまでの道のりと、電圧が上がって下がる階段(イメージ図)。送電の電圧段は東京電力パワーグリッドの例、発電時の電圧・変電所の呼び名・電柱の上の値は中部電力の例で、会社や地域で段の数字は違います。出典: 電柱図鑑オリジナル図解(公開情報をもとに作成)

送電線(図鑑)

鉄塔の電線と電柱の電線は、何がちがうの? — 送電と配電の違い

送電線そのものの見た目や名前は、図鑑の「送電線」にまとめています。ここでは、言葉の分担と、外から見たときの手がかりを見ます。

まず言葉から整理します。東京電力パワーグリッドの「電気の流れ」は、送電線を「発電所~変電所間などを経由する線」と呼んでいます。配電線のほうは「発電所から送られてきた電気が変電所を経て、最終的にお客さまへ送り届けられる電線」です。遠くへ大量に運ぶのが送電、家々へ配るのが配電、という分担です。

関西電力送配電は「配電とは、変電所に送られてきた電気を、みなさんの家へ送り届けること。そのために必要な設備が『電柱』や『配電線』です」と案内しています。ここまでを一行にすると、送電=発電所から変電所へ、配電=変電所から家へ、となります。

では、外から見た区別はどこでつくのでしょうか。中部電力の「架空送電」は、電線をささえるものには鉄塔、鉄柱、鉄筋コンクリート柱、木柱などがあるものの、強度と信頼性が高いため、主として送電線には鉄塔が使われる、と説明しています。つまり手がかりは「支えている構造物」です。4本脚の骨組みが支えていれば送電線、一本柱が支えていれば配電線、というのがおおまかな目安です。ただし、いま引いた中部電力の説明にもあるとおり、送電線をささえるものには鉄柱や鉄筋コンクリート柱、木柱もあります。一本柱に見えても送電線のことがある、ということです。中国電力ネットワークも、周辺景観に配慮した「環境調和鉄塔(モノポール鉄塔)」と呼ばれる鉄塔があると紹介しています。迷ったときは、上に何本の線が載っているか、がいしがどれくらい連なっているかも一緒に見てみてください。なお、送電線という電線そのものの呼び名・太さ・本数は、図鑑の「送電線」が正面から扱っています。

電圧の側からも線が引けます。電気設備に関する技術基準を定める省令の第2条は、電圧を三種に区分すると定めています。低圧は直流750ボルト以下・交流600ボルト以下、高圧はそれを超えて直流・交流とも7,000ボルト以下、特別高圧は7,000ボルトを超えるものです。この記事で出てくるのは交流なので、以降は交流の値で見ていきます。電柱の上でよく見る6,600ボルトの高圧配電線は、この区分でいう高圧です。鉄塔が支える送電線のほうは、多くの場合は特別高圧にあたります。会社ごとの実際の電圧は、あとの節でまとめて並べます。ただし支え方と電圧の対応は地域や設備でちがうので、これも目安です。

なお、鉄塔の形と、4本脚と一本柱で支え方がどう違うのかは図鑑の「送電鉄塔」に、一本柱の電柱がなぜ倒れないのかは別の記事にまとめています。ここでは「支えている線が違う」という一点だけを持ち帰ってください。

送電線(図鑑)送電鉄塔(図鑑)配電線(図鑑)電柱はなぜ倒れない? — 1本で立っていられるしくみ

変電所は何をする所ですか? — 電圧を変え、道を分ける所

記事のはじめに置いた図でいうと、鉄塔の少し先にある四角い施設です。関西電力送配電のページには「発電所から送られてきた非常に高い電圧の電気を、みなさんが使いやすい電圧に変えることを『変電』といい、この役割を果たしているのが変電所です」とあります。

関西電力送配電によれば、変電所の役割は電圧を変えることだけではありません。発電所を出発した電気の送り先をふり分けること、送電設備などで事故が起きた時に事故が起きた部分を切りはなして送電することも、大切な役割の一つに挙げられています。中部電力も変電所の役割として、送電効率のため電圧を高くすること、使用場所にあった使いやすい電圧にすること、電気を集めて必要な箇所へ分配すること、故障した個所の切り離しをおこなうことの四つを挙げています。電圧を変える箱であると同時に、道を分ける交差点でもあるわけです。

変電所には段があります。中部電力の「変電所の種類」は、いくつかの段に分けて紹介しています。50万ボルトと27万5,000ボルトの超高圧の電気を扱うのが超高圧変電所。発電所や超高圧変電所と配電用変電所との中間にあって、各方面への分配を担うのが一次変電所・二次変電所です。電圧を6,600ボルトまで下げ、配電線を通して家庭へ送り出すのが配電用変電所だと案内されています。ただし呼び名は会社によって違います。中国電力ネットワークの送電設備・変電設備のページに出てくるのは一次変電所と配電用変電所で、二次変電所という呼び名は出てきません。

数でいうと、東京電力パワーグリッドの変電所は約1,600箇所と公表されています。都市部のオフィスビルや学校、お寺の地下など約200箇所に地下変電所がある、とも書かれています。中部電力も、主要な機器を屋外に置く屋外変電所、すべて建物内に置く屋内変電所、地下に置く地下変電所を挙げています。散歩の途中では見つからない変電所もあります。

停電の復旧時間はどれくらい? — 復旧の順番と「うちだけ遅い」理由を、電柱の上から見る

発電所から送られてくる電気は何ボルトですか? — 旅は「上げる」から始まる

はじめの図の、左端までさかのぼります。中部電力の「変電所の役割」にはこうあります。発電機で作り出される電気は2万3,000ボルトや1万2,000ボルト。それを、電気抵抗によるロスが生じるため、50万ボルトや27万5,000ボルトという高い電圧にして送り出す、と書かれています。電気の旅は「下げる」ではなく「上げる」ことから始まる、というのが意外なところです。

その電気をつくる場所そのものも、九州電力送配電が言葉にしています。発電所は「水力・火力・原子力・地熱・風力・太陽光などのエネルギーを利用して、発電機により電気を作る所」。そこから、基幹送電線が伸びていきます。

そして、その線は一本の路線では終わりません。電気事業連合会の公開ページには「北海道から九州までの電力系統(電力システム)は、すべて送電線でつながっています(全国基幹連系系統)」とあります。これによって電力会社の垣根を超えた電力融通が可能になり、安定供給が支えられる、という説明です。見上げた線をたどっていくと、その先の基幹送電線が北海道から九州までつながっている、ということになります(どの線がどうつながっているかは路線によって違います)。

ちなみに、東日本と西日本で電気の周波数が違う話も、この全国のつながりと関係しています。そちらは別の記事にまとめました。

50Hzと60Hz — 日本の電気がふたつに分かれているわけ

電圧の段は、会社や地域でちがいます

ここからは数字が並びますが、先にお断りしておきます。電圧の段は全国で同じではありません。同じ「電気の旅」でも、会社によって段の数字が違います。ですので、代表値としてまとめず、会社名を先に置いて三社ぶんを並べます。

  • 東京電力パワーグリッドの例: 主に6万6,000ボルトから50万ボルトまでの送電設備がある。27万5,000ボルトと50万ボルトの超高圧設備は長距離大容量送電に使う。消費地に近づくにつれて15万4,000ボルト、6万6,000ボルトと電圧を落とし、配電用変電所で6,600ボルトまで下げる、という並びです。
  • 中国電力ネットワークの例: 発電所から一次変電所へは50万ボルト、22万ボルト、11万ボルトの送電線。一次変電所で下げたあとは6万6,000ボルト等の送電線で大工場や鉄道、配電用変電所へ送る、という段どりです。
  • 九州電力送配電の例: 基幹送電線は50万ボルト、20万ボルトなど。変電所でそれを6万ボルトなどに変え、配電用変電所でさらに2万ボルト、6千ボルトへ下げる、という順です。

発電所から家庭までの電圧の変化は、会社ごとにこれだけ違います。27万5,000ボルトと15万4,000ボルトが並ぶ会社もあれば、22万ボルトと11万ボルトが並ぶ会社もある、ということです。手元の鉄塔が何ボルトかは、この表からは決まりません。

送電線(図鑑)

電気が届くまでの最後の一段 — 100ボルトになるのは家の中ではない

数字は会社ごとに違っても、階段そのものの呼び方はそろっています。電力広域的運営推進機関(OCCTO)は「日本の電力系統は効率的に電気を運ぶため、特別高圧、高圧、低圧と電圧を変えながら電源(発電所)と需要(消費者)を結んでいます」と説明しています。この特別高圧・高圧・低圧という三つの言葉が、先に見た省令第2条の区分と対応しています。

階段の最後の一段は、じつは家の中ではありません。九州電力送配電は、一般の家庭には6千ボルトの電圧を近くの電柱に設置されている変圧器で100ボルトまたは200ボルトに下げて届ける、と説明しています。つまり、架空配電の地域では、100ボルトになる場所は家の中ではなく電柱の上ということになります。ただし、下げる場所はひととおりではありません。東京電力パワーグリッドは、配電線には電柱に電線を架けた架空配電線と、ケーブルを地中に埋めた地中配電線がある、と案内しています。電圧別には特別高圧(2万2,000ボルト)、高圧(6,600ボルト)、低圧(200ボルト、100ボルト)の配電線がある、とも書かれています。地中に電線を通している地域や、まとめて高い電圧で受けている建物では、電圧を下げる場所も設備も変わってきます。

架空配電の電柱の上を見上げると、その一段が三つの部品として並んでいます。中部電力の「架空配電」によれば、配電用変電所とつながっている電線に流れている電気は6,600ボルト。柱上変圧器は、その6,600ボルトを100ボルト・200ボルトに変える装置です。低圧配電線には、変圧した100ボルト・200ボルトが流れていると説明されています。上に太い線、その下にバケツ形の箱、さらに下に細い線。この順番が、電気の旅の最後の三段です。なお、家への引き込みには3本の電線を使う単相3線式と2本の単相2線式があり、単相3線式なら100ボルトと200ボルトの両方が使える、というのが中部電力の案内です。

柱上変圧器(図鑑)配電線(図鑑)

送電線はなぜ、高い電圧なのでしょうか? — 熱で逃げる分を減らすため

わざわざ上げてから下げるのは、遠回りに見えます。理由を、中部電力の「変電所の役割」が正面から答えています。電流が送電線を流れると、電気抵抗のため熱(ジュール熱)が出て、その熱が出ただけ電気がロスすることになる。そしてこの熱は電流が多いほど出るため、電流を少なくしてやればロスが少なくなる、という説明です。

同じページは、同じ電力の電圧と電流は反比例するので、電流を少なくして送電中のロスをへらすためには電圧を高くする必要がある、と続けています。東京電力パワーグリッドも「電気は高電圧であるほど送電ロスが少なくなる」と説明しています。遠くへ大量に送るほど、この効きめが大きくなります。中部電力は、変電所の役割の一つめに「送電効率のため電圧を高くする」ことを挙げています。

変電所の役割には、変電所の節で見たとおり「故障した個所の切り離し」もあります。これは停電のときに効いてくる役割です。故障した箇所をどう切り離し、復旧がどんな順番で進むのかは、別の記事にまとめています。

停電の復旧時間はどれくらい? — 復旧の順番と「うちだけ遅い」理由を、電柱の上から見る

外に出たら、どこを見ればいいの? — 鉄塔の電圧と高さを見分ける4つの手がかり

ここまでが図の話でした。ここからは、外で自分の目で確かめられる手がかりを四つ挙げます。どれも柵の外・道の上から見えるものだけです。

一つめは、がいしの連なりの数です。関西電力送配電のページには、がいしには架空送電線から鉄塔に電気が流れないようにする役割がある、とあります。そのうえで「電圧が大きくなるにつれてがいしの数が多くなるので、がいしの数で送電線の電圧を見分けることができるんです!」と案内しています。厚生労働省 青森労働局の資料には、参考として懸垂がいしの個数の目安表が載っています。ただし表自体に、長幹がいしが取り付けられている場合は電力会社等に電圧の確認を要する、と注記されています。数え方と例外は、電柱側の耐張がいしと見くらべながら、柵の外から数えてみてください。何個で何ボルトという個数の目安は、図鑑の「懸垂がいし」のページで、出典の表の値を『参考・例』として紹介しています。この記事では数字を載せず、比べ方だけを書きます。この表はもともと、移動式クレーンで作業する人に向けたものです。同じ資料にある離隔距離は作業のための値で、見に行くときの安全な距離ではありません。見るのは柵の外から、という約束はここでも変わりません。数えた個数は、「この鉄塔は隣の鉄塔より多い/少ない」という比べ方に使ってみてください。

二つめは、いちばん上を通っている細い線が1本か2本か、です。関西電力送配電は、架空地線には架空送電線へ雷が落ちないようにする避雷針の役割があると案内しています。公益社団法人 日本電気技術者協会の解説によれば、架空地線は一般には1条布設し、高電圧主要送電線では塔高も高いため、遮へい効果を上げるように2条布設する、とのことです。ここでは「上の線が1本か2本か」という観察点だけを持ち帰ってください。雷と避雷のしくみは、別の記事のほうがくわしいです。

三つめは、赤と白の塗り分けと、てっぺんで光る灯りです。中部電力は「地上高60m以上のものは、赤白に塗り分けられたり、航空障害灯としてフラッシュライトがつけられています」と説明しています。国土交通省 東京航空局は、地上高60メートル以上の高層建築物等には、免除となる場合を除き航空障害灯の設置が必要になると案内しており、昼間障害標識のほうは「必要になる場合があります」という書き方です。つまり、高い鉄塔がすべて赤白とはかぎりません。赤白の鉄塔を見つけたら高さのヒントになる、という程度に受け取ってください。

四つめは、骨組みの形です。中国電力ネットワークは、見た目(形状)での分類として山形鋼鉄塔(アングル鉄塔)、鋼管鉄塔(パイプ鉄塔)などを挙げ、周辺景観に配慮した「環境調和鉄塔(モノポール鉄塔)」も紹介しています。細い山形鋼を組んだ骨組みなのか、太いパイプなのか。遠くからでも、輪郭の太さで見分けられることがあります。

変電所については、外から機器が見えるとは限りません。中部電力は屋外変電所・屋内変電所・地下変電所の別を説明しており、建物の中や地下にあれば柵の外からは分かりません。関西電力送配電は変圧器・遮断器・断路器・避雷器がどんな機器かを文章で紹介していますが、柵の外からそれらを見分ける方法まで説明した公式資料は、今回見つけられませんでした。分からないものは、分からないままにしておきます。

耐張がいし(図鑑)懸垂がいし(図鑑)航空障害灯(図鑑)雷で停電するのはなぜ? — 直撃雷と誘導雷、電柱の上で起きていること

送電線の高さには、決まりがあるの?

見上げるほど高い所を通っているのには、理由があります。電気設備に関する技術基準を定める省令の第25条に、その理由が書かれています。架空電線などは「接触又は誘導作用による感電のおそれがなく、かつ、交通に支障を及ぼすおそれがない高さに施設しなければならない」と定めています。目的は、感電と交通の支障を防ぐこと。条文にそう書かれています。

具体的な数値は、経済産業省が公開している電気設備の技術基準の解釈にあります。第87条は、使用電圧が35,000ボルト以下の特別高圧架空電線の高さを表で規定しています。主なものを挙げると、道路を横断する場合は路面上6メートル。鉄道又は軌道を横断する場合はレール面上5.5メートル。その他の場合は地表上5メートルです。これらの値以上にすること、と定められています。道路については、車両の往来がまれなものや、歩行の用にのみ供される部分は除く、と条件が添えられています。このほかに、横断歩道橋の上に施設する場合の値も表に置かれています。

35,000ボルトを超える場合は、区分がもう一段細かくなります。同じ第87条は、山地等であって人が容易に立ち入らない場所に施設する場合など、条件ごとに別の値を置いています。さらに160,000ボルトを超える場合は、使用電圧と160,000ボルトの差から求めた値を上乗せする計算式の形です。電圧が高いほど高くする、という考え方が数式に入っているわけです。

では50万ボルトの送電線は地上何メートル以上なのか。その完成した数値を各社の公開資料に見つけることはできませんでした。計算式からは導けますが、数字だけが切り出されると誤解を生みやすいので、この記事には載せません。鉄塔そのものの高さは、日本一の記録などを記事末のQ&Aでまとめて触れます。鉄塔と鉄塔の間隔(径間)は、地形や電圧で大きく変わるため、この記事では扱いません。電柱と電柱の間隔なら、歩いて数えられる標準の数字を別の記事にまとめています。

電柱の高さと間隔をはかってみよう — 標準の数字と、台風のあとの大雨の話

見上げるときの約束 — 柵の外から、近づかない

最後に、いちばん大事なことを書きます。九州電力送配電は、送電線や配電線、変電所の電気設備には非常に高い電圧の電気が流れていると説明しています。これらは触らなくても、近づくだけで感電する恐れがある、とも書かれています。そのうえで「絶対に鉄塔や電柱に登ったり、変電所へ立ち入ったりしないようお願いします」と呼びかけています。鉄塔は、登るものでも敷地に入るものでもありません。

遊びについても案内があります。関西電力送配電は、タコ上げやラジコン飛行機遊びなどは電線のない所でするよう呼びかけ、かかってしまったときは連絡先へ知らせるよう案内しています。東京電力パワーグリッドも、凧やドローンが送電線に引っかかった場合は自分で取ろうとせず連絡するよう求めています。連絡先は、お住まいのエリアの送配電会社です。釣りについても案内があります。関西電力送配電は、鉄塔や電線の近くで釣りをするのは危険で、電線に釣竿が触れたり近づいたりするだけで感電する恐れがあり、特にカーボン製の釣竿は電気をよく通すため注意が必要だ、と説明しています。東京電力パワーグリッドも、釣竿を送電線に近づけないよう、送電線の近くでは釣竿をたたんで持ち運ぶよう呼びかけています。中国電力ネットワークは、無人飛行機(ドローンなど)について、航空法に基づき安全な距離を確保するよう求めています。

切れて垂れ下がった電線を見かけたときも同じです。九州電力送配電は、切れた電線には電気が流れている可能性があり、触ると感電するおそれがあると説明しています。そのうえで、近づかないよう求めています。四国電力送配電も、電線が切れて垂れ下がっているのを見つけたときは大変危険なので近づかないよう呼びかけています。連絡先は、お住まいのエリアの送配電会社です。停電情報のページなどから窓口をたどれます。火が出ている、人が倒れている、というときは119へ。切れた線が道路をふさいで車や人が危ないときは、110で警察にも知らせてください。電力線か通信線かの見分け方と、全国の窓口のたどり方は、別の記事にまとめています。

というわけで、持ち帰るのは、この一行だけで大丈夫です。見るのは、柵の外から。守るのはこれだけです。道路や公園から、無理のない範囲で見上げてみてください。次の散歩では、まず近所の鉄塔を探して、がいしの連なりを数え、いちばん上の細い線が1本か2本かを確かめてみてください。そこから線を目で追っていくと、いつか変電所のある方向に行き当たります。もちろん、たどるのは目だけで。その先が、発電所です。

電線が垂れ下がっている・切れている — 触らずに、どこへ連絡する?

よくある質問

発電所から自宅までの電気の流れは?

発電所でつくられた電気は、送電線・変電所・配電線などの設備を通って家庭に届くと東京電力パワーグリッドは説明しています。発電所を出た電気はいったん高い電圧に上げて送り出され、変電所で段階的に下げられます。最後は、架空配電の地域なら電柱の柱上変圧器で100ボルトや200ボルトになります(地中配電やビルなどでは、下げる場所が変わります)。

送電と配電の違いは何ですか?

発電所と変電所などをつなぎ、遠くへ大量に運ぶ線が送電線、変電所から各家庭へ届ける線が配電線、というのが東京電力パワーグリッドの整理です。中部電力は主として送電線には鉄塔が使われると説明し、関西電力送配電は電柱と配電線が家へ電気を送り届ける設備だと案内しているので、支えている構造物も手がかりのひとつになります。

変電所は町のどこにありますか?

外から見える所ばかりではありません。中部電力は、主要な機器を屋外に置く屋外変電所、すべて建物内に置く屋内変電所、地下に置く地下変電所の別を説明しています。東京電力パワーグリッドは変電所を約1,600箇所に設置していると公表し、都市部のオフィスビルや学校、お寺の地下など約200箇所に地下変電所があるとも公表しています。柵の外から見つからない変電所もあります。

送電線はなぜ高い電圧なのですか?

送電中に失われる分を減らすためです。電流が送電線を流れると電気抵抗のため熱が出て、その分が失われます。熱は電流が多いほど出るので、同じ電力なら電圧を高くして電流を減らすとロスが少なくなると中部電力は説明しています。遠くへ大量に送るほど、この効きめが大きくなります。

発電所から送られてくる電気は何ボルトですか?

会社や地域で違います。中部電力は、発電機がつくる電気は2万3,000ボルトや1万2,000ボルトで、それを50万ボルトや27万5,000ボルトに上げて送り出すと説明しています。送り出したあとの段も会社ごとに違い、東京電力パワーグリッドは15万4,000ボルト・6万6,000ボルト、中国電力ネットワークは22万ボルト・11万ボルト、九州電力送配電は20万ボルト・6万ボルトといった値を公開しています。手元の鉄塔が何ボルトかは、この数字からは決まりません。

電気が家に届くまでに、電圧はどう変わるのですか?

上げてから、何段かに分けて下げていきます。まず発電所で2万3,000ボルトや1万2,000ボルトの電気を50万ボルトなどへ上げ、そこから変電所で段階的に下げていくと中部電力は説明しています。発電所から家庭までの電気の流れは、この「上げてから下げる」の繰り返しです。最後の一段は家の中ではなく電柱の上で、柱上変圧器が6,600ボルトを100ボルト・200ボルトに変えると中部電力は案内しています。ただし段の数も値も会社や地域で違います。

家に100ボルトと200ボルトの両方があるのはなぜですか?

家庭への引き込みには3本の電線を使う単相3線式と、2本の単相2線式がある、と中部電力は書いています。単相3線式なら100ボルトと200ボルトの両方が使えて便利だと案内されており、エアコンなどで200ボルトを使えるのはこのしくみによります。

日本一高い送電鉄塔は?

電気事業連合会のEnelogは、高さ226メートルの日本一高い送電鉄塔と、2番目に高い223メートルの鉄塔を紹介しています。ふつうの鉄塔はこれよりずっと低く、中国電力ネットワークは「鉄塔の高さは40~60m程度が一般的」と案内しています。ただしこれは同社の例で、海峡を横断する場所では200メートルを超えるものもあると説明されています。

鉄塔の送電線が何ボルトかは見分けられますか?

がいしの数が手がかりになると関西電力送配電は案内しています。ただし厚生労働省 青森労働局の資料の目安表にも、長幹がいしが付いている場合は電力会社等への確認が必要と注記があり、電圧の段は会社ごとに違います。個数から何ボルトかを決めることはできないので、『隣の鉄塔より多い/少ない』という比べ方に使ってみてください。

あわせて読みたい

参考にした公開情報