Practical Guide
電柱はなぜ倒れない? — 1本で立っていられるしくみ
最終更新: 2026-07-20/公開情報をもとに作成しています
鉄骨を組んだ4本脚の鉄塔とちがって、電柱は1本きりで立っています。何本もの電線に引っぱられ、変圧器のような重い機器をのせて、台風の風を受けても、いつもの場所にすっと立ったまま。考えてみると、ちょっと不思議です。
その秘密は、「地面の下」「力のバランス」「設計のルール」の3つにあります。このページでは、電柱が地面に何メートル埋まっているのか、「支線」と呼ばれるワイヤーが何をしているのか、どんな基準で設計されているのかを、法令やメーカーの公開情報をもとに整理します。小中学生の自由研究のヒントにもどうぞ。
鉄塔は4本脚、電柱は1本きり
送電線を支える鉄塔は、鉄骨を組んだ4本脚でどっしりと立っています。ところが、街なかの電柱は1本きり。上のほうには変圧器などの機器が付いて、何本もの電線に引っぱられて、台風の日には強い風も受けます。それなのに、倒れずに立ち続けている——あらためて考えると、不思議だと思いませんか。
電柱のてっぺんに住んでいるでんチュンも、こう聞いてきます。「ぼくの家が倒れない理由、知ってる?」。この記事では、その答えを「地面の下」「力のバランス」「設計のルール」の3つに分けて見ていきます。
地面の下に、全長の約6分の1が埋まっている
まずは、地面の下の話から。「電柱は何メートル埋まっているの?」への答えは、「全長のおよそ6分の1」です。国のルールである「電気設備の技術基準の解釈」(第59条)では、街なかでよく使われる鉄筋コンクリート柱について、全長15m以下の柱は根入れ深さ(地面に埋める深さ)を全長の6分の1以上とすることが定められています。全長15mの柱なら、約2.5mが地面の下。見えている部分だけが電柱ではなく、大人の背丈をはるかにこえる深さまで、柱は続いているのです。
おまけの豆知識をひとつ。同じルールには、水田のように地盤がやわらかい場所では「根かせ」と呼ばれる補強を特にしっかりと施すこと、という決まりもあります。地面の下でも、場所に合わせた工夫がされているわけです。
電柱にかかる3つの力
地面にしっかり埋まっていても、それだけでは安心できません。電柱には、いつもいろいろな力がかかっているからです。NTT技術ジャーナルの技術解説では、電柱にかかる荷重(力)は大きく3種類に分けられています。
- ①風圧荷重: 風が電柱や電線を押す力です。電線は長くて受ける面積が大きいので、風の強い日には見た目以上に大きな力がかかります。
- ②ケーブル張力: 電線やケーブルが電柱を引っぱる力です。ぴんと張られた電線は、いつも柱を引っぱり続けています。
- ③垂直荷重: 変圧器などの機器や柱そのものの重さなど、上から下へかかる力です。
電柱は、この3つの力を見込んだうえで設計されています。中でもやっかいなのが②のケーブル張力。次に見る「支線」は、まさにこの力への対策です。
支線と支柱 — 張力のバランスを取る装置
電柱から地面へ、斜めにぴんと張られたワイヤーを見たことはありませんか。「電柱を支えるワイヤー」「電柱を支えている線」などと呼ばれることもある、あの斜めの線の正式な名前は「支線」です。NTT技術ジャーナルの解説では、支線は、電柱に偏った張力(不平均張力)が加わる場合に、電柱に留められたつり線やケーブルとの張力のバランスを取り、電柱の倒壊や傾斜を防ぐために設置するワイヤだと説明されています。
つまり支線は、電線に引っぱられる力を反対側から引っぱり返す「張力バランス装置」。地面に近い部分に黄色いカバー(支線ガード)が巻かれていることが多いので、探すときの目印になります。また、ワイヤーの代わりにもう1本の柱で斜めに突っ張って支える「支柱」という方式もあります。それぞれのくわしい姿は、図鑑のページでどうぞ。
支線がない電柱は、なぜ平気なの?
ここでひとつ、疑問がわきます。街を見わたすと、支線が付いていない電柱のほうが圧倒的に多いのです。あの柱たちは、なぜ平気なのでしょうか。
答えは「両側から引っぱり合っているから」。まっすぐ並んだ電柱では、1本の柱から見て前とうしろの電線が反対向きに引っぱり合うので、張力がほぼ打ち消し合って、柱を傾けようとする力はあまり残りません。ところが、電線の端(引き留められて終わる場所)や曲がり角の柱では、片側だけに引っぱられる偏った力——不平均張力が生まれます。だから、そういう場所の柱に支線が付くのです。
これを逆から読むと、観察のヒントになります。「支線を見つけたら、そこは電線の端か曲がり角」。電線を強く引き留める場所には「耐張がいし」という連なった形のがいしが付いていることも多いので、あわせて探してみてください。
埋めるだけじゃない、計算して建てている
深く埋めて、支線でバランスを取って——それだけではありません。電柱は、法律で強さの基準が決められています。「電気設備に関する技術基準を定める省令」(第32条)では、電柱などの支持物は、電線による引張荷重や、10分間平均で風速40m/sの風圧荷重、その場所で通常想定される地理的条件・気象の変化・振動・衝撃などの影響を考慮して、倒壊のおそれがないよう安全なものでなければならない、と定められています。台風なみの強風をはじめから想定して、強度を計算したうえで建てられているのです。
柱そのものにも工夫があります。コンクリート柱は「プレストレストコンクリート」という作り方でつくられています。あらかじめ鋼材(中の鉄の棒)に引張力を加えてからコンクリートを固めることで、ひび割れを抑え、しなやかに曲がって折れにくい柱になると、メーカーの日本コンクリート工業が解説しています。台風の多い地域では、さらに強い風を想定して設計されることもあるそうです。かたいだけでなく、しなやか。電柱は、見た目よりずっと考えぬかれた構造物なのです。
それでも、倒れることはある
ここまで読むと「電柱は絶対に倒れない」と言いたくなりますが、そうは言えません。大きな台風や地震などの災害では、実際に電柱が倒れたり傾いたりすることがあります。設計で想定した以上の力がかかることもあれば、飛ばされてきたものがぶつかることもあるからです。
もし倒れた電柱や垂れ下がった電線を見つけたら、絶対に近づかず、さわらず、その地域の送配電会社に連絡してください。台風のときに停電が起きるしくみや復旧の流れは、「台風と停電」の記事にまとめています。なお、電柱が倒れた場合の賠償・保険・費用のお話は、この記事では扱いません。
観察してみよう — 支線のある柱、ない柱
最後は、外に出て確かめたくなった人へ。おすすめの観察テーマは「支線のある柱・ない柱くらべ」です。散歩しながら支線付きの電柱を探して、その場所が電線の端なのか、曲がり角なのかを比べてみてください。「支線を見つけたら、そこは電線の端か曲がり角」という今日のルールを、実際の街で確かめられます。まっすぐな道の途中の柱に支線がないことまでチェックできたら、かなりの上級者です。
夏休みの自由研究のテーマにもぴったりです。観察のコツや記録のしかたは、夏休み特集と観察ガイドにまとめています。観察するときは、電柱や支線にさわらず、離れたところから見ること。車や自転車にも気をつけて、安全第一で楽しんでください。
よくある質問
電柱は何メートル埋まっていますか?
全長のおよそ6分の1が地面の下に埋まっています。国のルール「電気設備の技術基準の解釈」では、よく使われる全長15m以下の鉄筋コンクリート柱について、根入れ深さを全長の6分の1以上とすることが定められています。全長15mの柱なら約2.5m、全長12mの柱なら約2mです。土質などの条件によって深さは変わります。
電柱を支えている斜めのワイヤーは何ですか?
「支線」と呼ばれるワイヤーです。電線に引っぱられる電柱が倒れたり傾いたりしないように、反対側から引っぱり返して張力のバランスを取っています。地面に近い部分に巻かれている黄色いカバーは「支線ガード」で、歩く人や自転車が支線に気づきやすくするための目印です。
電柱が倒れることはありますか?
あります。大きな台風や地震などの災害では、設計で想定した以上の力がかかるなどして、電柱が倒れたり傾いたりすることがあります。倒れた電柱や垂れ下がった電線を見つけたら、絶対に近づかず、さわらず、その地域の送配電会社に連絡してください。
なぜ鉄塔は4本脚で電柱は1本なのですか?
支えている電線の規模が違うからです。鉄塔が支える送電線は、発電所から変電所まで高い電圧のまま大量の電気を運ぶ線で、太くて重い電線を高いところに張るぶん、引っぱる力も大きくなります。だから鉄骨を組んだ4本脚の塔でどっしり支えています。一方、電柱が支えるのは変電所から街や家庭へ電気を配る配電線で、送電線ほどの規模ではないため、深く埋めた1本の柱と支線などの組み合わせで支えられるのです。