くらしのガイド

家の前で電柱の建て替え工事が始まったら — 2本並んだ電柱のなぞと、停電の話

最終更新: 2026-08-16/公開情報をもとに作成しています

散歩の途中、電柱のそばに工事のお知らせ。ふと見ると、同じ場所に電柱が2本、寄りそうように並んで立っている——。「うちの前の電柱、どうなるの?」「停電するの?」と、気になりだすと止まらないものです。

じつは電柱は、建てたら建てっぱなしの設備ではありません。送配電会社は電柱を1本ずつ管理していて、年月を重ねた柱は、点検の結果をふまえて新しい柱へと建て替えられていきます。家の前で始まった工事は、その世代交代の順番が回ってきた合図です。

このページでは、電柱の建て替え工事について、なぜ建て替えるのか、どんな流れで進むのか、停電はあるのか、そして電柱の図鑑らしく「工事のどこがおもしろいか」まで、送配電会社や公的機関の公開情報をもとに整理します。なお、家の中の電気設備(ブレーカーなど)の操作は、このサイトでは扱いません。

なぜ建て替える? — 電柱にも「取り替えどき」がある

まず、「なぜ、うちの前の電柱を?」という疑問から。電柱は、建てたあともずっと管理され続けている設備です。東北電力ネットワークは、電柱の建て替え作業を紹介する公式動画の説明で「配電部門では管内にある電柱一本一本を管理し、定期的に建て替えております」としています。1本ずつ状態が把握され、順番に更新されていく——家の前の工事は、その順番が回ってきたということです。

背景には、日本の電柱の「年齢」があります。送配電網協議会(全国の送配電会社でつくる業界団体)は、「一般送配電事業者が所有する送配電設備の多くは、1960~70年代の高度成長期以降に大量に建設されており、今後、本格的に高経年対策を要する時期を迎えることから、計画的に更新していく必要があります」と説明しています。関西電力送配電が管理するコンクリート柱だけで約270万本(2020年3月末時点)。高度成長期にいっせいに建てられた柱たちが、いま、いっせいに年を重ねているのです。

では、取り替えどきはどう決まるのでしょうか。関西電力送配電は、経年による電柱の劣化の例として「コンクリートの剥離」や「内部鉄筋の錆」を挙げたうえで、設備を安全に寿命の限界まで使い切ることを目指し、「詳細な点検結果や劣化診断技術の活用などにより、最適な補修や取替えのタイミングを見極めます」と説明しています。送配電網協議会も、巡視・点検による設備状態の把握や劣化診断をもとに、計画的な設備更新を行っているとしています。つまり「電柱は何年もつ?」への答えは、一律の年数ではなく、「点検の結果で判断される」なのです。

ちなみに、税金の世界には「法定耐用年数」という数字があり、減価償却資産の耐用年数等に関する省令では、配電用の鉄筋コンクリート柱は42年と定められています。ただしこれは、資産の価値を少しずつ費用にしていくための税務上の目安で、42年たったら建て替えるという決まりではありません。取り替えの時期は、あくまで点検と劣化診断の結果で判断される——というのが各社の説明です。

コンクリート柱(図鑑)電柱はなぜ倒れない? — 1本で立っていられるしくみ

全体の工程 — 「電柱が2本並んでいる」のはなぜ?

建て替え工事のおおまかな流れは、公開資料から次のように整理できます。まず、古い柱の近くに新しい柱を建てます。次に、電線や柱の上の機器を、古い柱から新しい柱へ移し替えます。そして、何も乗っていない状態になった古い柱を抜いて撤去する——。「新しく建てる→移し替える→古い柱を抜く」という順番です。

ここで、街の風景のなぞがひとつ解けます。同じ場所に電柱が2本、ぴったり並んで立っているのを見たことはありませんか。多くの場合、あれは建て替えや移設の途中経過です。新しい柱が建ってから、古い柱が抜かれるまでのあいだ、新旧の柱は並んで立ち続けます。

しかも、この「並んでいる期間」は意外と長くなることがあります。電柱には電力の設備だけでなく、通信ケーブルなど他の会社の設備が一緒に乗っていることが多いからです(共架といいます)。東京電力パワーグリッドの資料では、新しい柱を建てる工事が終わっても「各共架会社の改修が完了しなければ撤去工事が実施できません」とされ、共架会社の回線切り替えなどに時間を要する場合は「抜柱まで時間がかかります」と説明されています。柱に乗っているみんなの引っ越しが終わるまで、古い柱はじっと待っている——2本並んだ電柱は、順番にバトンを渡している途中の姿なのです。

電柱の建て替え工事の一般的な流れを4コマで示した図。1は点検や劣化診断の結果から建て替えが決まる場面。2は古い柱のすぐ近くに新しい柱を建てる場面で、新旧の電柱が2本並んで立つ。3は電線や柱の上の機器、通信ケーブルなどの共架設備を、古い柱から新しい柱へ順番に移し替える場面。4はすべての移し替えが終わり、何も乗っていない古い柱を抜いて工事が完了した場面。移し替えが終わるまで新旧2本が並んで立ち続けるため、街で「電柱が2本並んでいる」光景が生まれるという注記付き。
電柱の建て替え工事の一般的な流れ(イメージ図)出典: 電柱図鑑オリジナル図解(公開情報をもとに作成)

電力柱・電信柱・共用柱(図鑑)

停電するの? — お知らせのビラが来たら

いちばん気になるのは、やはり停電でしょう。答えは「停電する場合と、しない場合がある」です。関西電力送配電は「電気設備の工事に伴い、停電をお願いする場合があります」と案内しています。「お願いする場合があります」という書き方のとおり、すべての工事で停電するわけではありません。裏を返せば、電気を止めずに進められる工事もあるということです。

停電を伴う場合は、事前にお知らせがあります。関西電力送配電の案内では「停電を伴う工事を行う際には、事前にビラなどにより停電日時をお知らせするとともに、可能な限り短時間で終了するよう努めております」とされています。ポストにビラが入っていたら、停電の日時を確かめておきましょう。同社は「安全に工事を行うため、停電にご理解とご協力をお願いいたします」とも呼びかけています。電線のすぐそばで人が作業する工事です。安全のための停電、と受け止めたいところです。

なお、工事の停電のように「家の外側」で電気が止まる停電では、家の中のブレーカーは落ちないまま、電気だけが消える形になります。中部電力パワーグリッドの解説ページにも、「なぜ家の中のサービスブレーカーや漏電遮断器が切れていないのに停電するのか」という疑問にイラストで答えるコーナーが設けられています。くわしいしくみは「停電なのにブレーカーが落ちてない?」に、停電情報ページの探し方は「停電情報の調べ方」にまとめています。停電の前後に家の中でしておくとよいことは各社が案内していますが、屋内の電気設備の操作は当サイトでは扱いません。お手元のビラや、お住まいのエリアの送配電会社の案内に従ってください。

停電なのにブレーカーが落ちてない? — 「家の外側」で起きていることの見分けかた停電情報の調べ方 — 全国の停電情報ページまとめ

見どころ観察ガイド — 工事の日は「はたらくくるま」の日

ここからは、電柱の図鑑らしく「観察する側」の目線で。建て替え工事の日は、ふだん見られない専用車両がそろう日でもあります。主役級は、穴を掘って柱を建てるための車。国土交通省の車体の形状の区分では「穴掘建柱車」と呼ばれ、「地面の掘削又は建柱を行うために使用する自動車」と定義されています。掘削や建柱のためのドリル装置などを備え、作業を安定させるアウトリガー(張り出し脚)を持つ——という要件のとおり、地面に大きなドリルで穴を開け、新しい柱を吊り上げて建てていく、名前そのままの一台です。

電線や機器の移し替えでは、高所作業車も活躍します。東京電力パワーグリッドの資料でも、電柱の工事は「建柱車や高所作業車など特殊車両」を使う工事だと説明されています。バケット(かご)に乗った作業員さんの手で、柱の上の設備が少しずつ新しい柱へ——。じっくり見たい方には、東北電力ネットワークが公式YouTubeで公開している動画「電柱建替作業~秋田支社~」がおすすめです。「普段は見かけることの少ない」建て替え作業の様子を、公式映像で安全に楽しめます。

もうひとつの観察ポイントは、電柱番号札です。電柱には管理用の番号札が付いていて、建て替えのあとは新しい柱がその場所の役目を引き継ぎます。工事が終わったら、新しい柱のどのあたりに、どんな番号札が付いたか見てみてください。ぴかぴかの柱にぴかぴかの札——世代交代の記念写真を、離れた場所から一枚どうぞ。番号札の読み方は「電柱番号の調べ方」でくわしく紹介しています。

【たいせつなお約束】工事のあいだは、工事の場所に近づかない・作業の邪魔をしないことが何よりも大切です。カラーコーンや柵の内側には絶対に入らず、交通誘導や掲示に従ってください。写真を撮るときも、道路にはみ出さない安全な場所から。作業中の車両のまわりは重い柱や工具が動く場所で、電線のそばには感電の危険もあります。お子さんと見るときは手をつないで、じゅうぶんに距離をとって。「遠くから静かに応援」が、電柱観察のマナーです。

高所作業車がいる工事(図鑑)電柱番号の調べ方電柱番号札(図鑑)

敷地に電柱がある場合 — 「移設」とは出発点がちがう

自分の敷地の中に電柱が立っている場合、その柱の建て替えはどうなるのでしょうか。敷地内の電柱は、土地の所有者の承諾にもとづいて設置され、電柱敷地料(土地の使用料)が支払われている設備です。そのため、建て替えのような工事の際には、所有会社から土地の所有者へ連絡・相談があるのが一般的です。東京電力パワーグリッドの資料でも、電柱の設置には地権者との用地交渉のステップがあることが示されています。具体的な段取りはケースによって異なるため、所有会社からの案内で確認してください。

ここで、隣の記事との役割分担をはっきりさせておきます。このページで扱ってきた「建て替え」は、設備を持つ会社側の都合——老朽化した設備の更新——で行われる工事です。一方、「駐車場の出入り口にかかるので動かしてほしい」のように、住民側の都合で電柱を動かしてもらうのは「移設」で、中国電力ネットワークのFAQでも「移動にあたっては、お客さまに費用のご負担をお願いする場合があります」とされているとおり、依頼者が費用を負担するのが原則です。同じ「電柱を建て直す工事」に見えても、出発点が逆なのです。移設の相談先や流れは「電柱の移設・移動はどこに頼む?」に、敷地料のきほんは「電柱敷地料とは?」にまとめています。

電柱の移設・移動はどこに頼む?費用負担と流れの目安電柱敷地料とは?金額の目安・支払い時期・名義変更の手続き電柱敷地料はどこに問い合わせる? — 会社別の窓口まとめ

よくある質問

電柱の建て替え工事には、どのくらいの時間・期間がかかりますか?

建て替え工事だけを対象にした、一般向けの公式な期間の目安は見当たりませんでした。参考になる公開情報として、東京電力パワーグリッドは移設の場合の標準的な工期を、電柱5本以下で改修方法の決定から撤去まで「概ね6ヵ月以上」と示しています。通信線など共架設備の移し替え待ちで、古い柱が抜かれるまでさらに時間がかかる場合もあります。停電を伴う場合の停電時間については、関西電力送配電が「可能な限り短時間で終了するよう努めております」と案内しており、日時は事前のビラで知らされます。個別の工事のスケジュールは、お知らせのビラや、その工事を行う会社の案内で確認してください。

電柱の工事で停電した場合、家のブレーカーは落ちますか?

工事による停電で家のブレーカーがどうなるかを、一般向けに明記した公式の説明は見当たりませんでした。しくみとしては、工事の停電は「家の外側」で電気が止まる形のため、家の中のブレーカーには何も起きないまま電気が消えるのが基本です。くわしくは「停電なのにブレーカーが落ちてない?」で解説しています。停電の前後に家の中でしておくとよいことは、関西電力送配電が停電前・停電中・復電後に分けて注意点を案内しています。屋内の電気設備の操作は当サイトでは扱わないため、具体的な手順はお手元のビラや、お住まいのエリアの送配電会社の案内に従ってください。

電柱の建て替え費用は誰が負担しますか?

老朽化にともなう建て替えは、設備の所有会社が行う更新工事で、土地の所有者や近隣の住民に工事費用が請求される話は出てきません。送配電網協議会の解説では、送配電設備の維持・更新にかかる費用は託送料金として電気料金に含まれ、電気の利用者から広く回収される、と説明されています。一方、住民側の都合で依頼する「移設」は、依頼者が費用を負担するのが原則とされています。この違いは「電柱の移設・移動はどこに頼む?」でくわしく紹介しています。

抜いたあとの古い電柱はどうなりますか?

古い柱は、電線や機器、通信ケーブルなどの共架設備がすべて新しい柱へ移し終わってから抜かれます。東京電力パワーグリッドの資料でも、「各共架会社の改修が完了しなければ撤去工事が実施できません」と説明されています。抜かれたあとの柱がどう処理されるか(リサイクルなど)については、一般向けに公開されたまとまった説明を確認できなかったため、このページでは扱いません。撤去までのあいだ、新旧2本の柱が並んで立つ期間があることは、本文「全体の工程」で紹介したとおりです。

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