Sekai Tabi

なぜ日本は電柱だらけ? — 世界の無電柱化くらべ

最終更新: 2026-07-20/公開情報をもとに作成しています

スズメのなかまは、世界のいろんな街で暮らしているんだって。そのなかまたちの街の写真を見ると、あれ?と思うことがあるんだ。——電柱が、ないんだよ。空を見上げても、電線が1本も横切っていない街並みがあるんだって。

ぼくのおうちがある日本には、国土交通省の報道発表(2022年)によると、全国に約3,600万本もの電柱が存在するとされているよ。どうして日本には電柱がたくさんあって、電柱のない国もあるんだろう?

「でんチュンの世界の電柱たび」の第1回は、その素朴なギモンがテーマ。世界の無電柱化のようすと、日本に電柱が多い理由、そして電柱がなくなった街で変圧器がどこにいるのかまで、公開されている資料をたよりに旅してみるよ。

世界の街には、電柱がない場所がある

国土交通省の「無電柱化の整備状況(国内、海外)」のページでは、ロンドン・パリなどのヨーロッパの主要都市や、香港・シンガポールなどのアジアの主要都市では無電柱化が「概成」している——つまり、おおむね完成しているとされているんだ。街の電線が地中などに収められていて、電柱が立っていない状態が、あたりまえの景色になっている都市があるんだね。

いっぽう日本はというと、同じページでは、日本の無電柱化率は東京23区で8%、大阪市で6%(2019年度末時点・道路延長ベース)と紹介されていて、海外の主要都市に対して「立ち遅れています」と書かれているよ。日本でいちばん進んでいるエリアでも、まだ1割に届いていないんだ。

ひとつだけ、数字を見るときの注意だよ。このページの海外の数字は都市ごとに調べた年がちがっていて、ロンドンは2018年、パリと香港は2004年、シンガポールは2001年の状況(ケーブル延長ベース)とされているんだ。日本の数字(道路延長ベース)とは数え方もちがうから、きっちり同じものさしでくらべた数字ではない、ということは覚えておいてね。それでも「電柱がほぼない都市がある」と「日本はまだ1割未満」という大きな絵は、はっきり見えてくるよ。

世界の主要都市と日本の無電柱化率をくらべた棒グラフ風の図解。ロンドン(2018年)・パリ(2004年)・香港(2004年)・シンガポール(2001年)は無電柱化が概成=おおむね100%とされる一方、日本は東京23区で8%、大阪市で6%(2019年度末・道路延長ベース)。都市ごとに調査年や数えかたが異なるため同じものさしの比較ではないこと、出典は国土交通省の公開資料であることを注記している。
無電柱化率くらべ(国土交通省の公開資料をもとに作成・都市ごとに調査年と数えかたが異なる)出典: 電柱図鑑オリジナル図解(公開情報をもとに作成)

日本に電柱が多いのはなぜ?

国土交通省の報道発表(2022年)では、全国には依然として約3,600万本の電柱が存在し、毎年数万本単位で増え続けている状況にあるとされているんだ。無電柱化が進められる一方で、新しく建つ電柱もまだ多いんだね。

どうしてこうなったのかは、国立国会図書館の資料「無電柱化をめぐる近年の動向」(2016年)が歴史をたどって説明してくれているよ。日本では戦後から一貫して、電線を電柱に架ける「架空線」による整備が一般的だったんだって。戦災からの復興、そして経済成長へと進むなかで「安い電気の安定供給」がなにより優先されて、地中化よりも先に電線の被覆技術が普及したこともあり、現在まで架空線での整備が続いてきた——とされているんだ。

同じ資料では、海外の歴史もちょっとだけのぞけるよ。ロンドンでは19世紀末、ガス管がすでに地中にあったことから公正な競争のために電線も地中化が義務付けられ、ニューヨークでは架空電線での感電事故が問題になって、安全のために行政主導で無電柱化が進められた、と紹介されているんだ。国がちがえば、電気の歴史もちがうんだね。

もうひとつの大きな理由がお金だよ。同じ資料では、国土交通省の資料として、道路1km当たり、電線共同溝整備の土木工事に約3.5億円、電気設備工事に約1.8億円かかるとされていて、電柱を使用する場合(1000〜2000万円)に比べてずっと高額だと紹介されているんだ。日本の電柱そのものの種類や本数の話は、図鑑の「電柱の種類」のページでもしているよ。

電柱の種類(図鑑)

無電柱化のいいところ・むずかしいところ

無電柱化には、いいところと、むずかしいところの両方があるとされているよ。ここでは国立国会図書館の資料(2016年)で整理されている内容を、両方そのまま並べて紹介するね。どちらが正しい、と決めるページではないよ。

まずは、いいところとして挙げられている3点だよ。

  • 景観: 電柱や電線類が撤去されることによる良好な景観形成の効果が大きいとされているよ。
  • 通行空間: 道路上の障害物となる電柱がなくなることで通行空間が広がり、衝突事故等の防止に資するとされているんだ。高齢の人や障害のある人の移動をスムーズにするバリアフリーの観点からも重要とされているよ。
  • 防災: 阪神・淡路大震災(1995年)では電柱8,000本以上が倒壊し、東日本大震災(2011年)でも電柱5万6000本が被害を受けたと報告されていて、いずれの震災でも地中線のほうが架空線よりも電気の供給支障の発生率が低かったとされているんだ。

いっぽうで、むずかしいところも同じ資料に整理されているよ。日本で無電柱化が進まない最大の理由は整備費用の高さであると言われていること。日本の道路工事は埋戻しや仮復旧を毎日行う必要があって工事が長期化しやすいと指摘されていること。そして、変圧器などの「地上機器」の置き場所について地域の合意形成に苦労することや、幅の狭い道路(幅員2.5m未満)には対応しにくいことも課題とされているんだ。どう進めていくかは、国や自治体、電気・通信の事業者のあいだで今も検討が続いている話題だから、ぼくは両方の見かたをそのまま届けるよ。

電柱がない街で、変圧器はどこにいる?

ここで、観察好きのキミにいちばん伝えたい話だよ。日本の電柱の上には、電気の電圧を家庭用に下げる「柱上変圧器(トランス)」というバケツみたいな機器が乗っているよね。じゃあ、電柱がなくなった街では、あの子たちはどこへ行くんだろう?

国立国会図書館の資料(2016年)によると、いま主流の「電線共同溝方式」では、電線類は道路の下の管路に収められて、変圧器などは「地上機器」として地上に設置されるとされているんだ。電柱のない通りの歩道の脇に、四角い金属の箱がすっと立っているのを見たことはないかな? あれが地上機器かもしれないよ。日本の柱の上のトランスと同じ仕事を、地上の箱がしているんだ。

おもしろい工夫も紹介されているよ。金沢市では、変圧器などの地上機器を道路上に置かずに、照明柱などに埋め込んだり取り付けたりする「ソフト地中化」という手法が採られている、と同じ資料で紹介されているんだ。街によって、機器のかくれんぼの場所がちがうんだね。柱の上のトランスの姿は、図鑑の「柱上変圧器」のページでじっくり観察できるよ。

柱上変圧器(図鑑)配電線(図鑑)

日本の無電柱化はどこで見られる?

「電柱のない通り」は、じつは日本でも見られるよ。国土交通省の「都道府県・政令市別の無電柱化率」のページ(2021年度末時点)では、最も無電柱化率が高い東京都でも無電柱化されている道路は5%台で、特別区・政令市では無電柱化率が5%を超えているのは東京23区・大阪市・名古屋市のみとされているんだ。数字は小さいけれど、ゼロじゃない。つまり、さがせば出会えるということだね。

見つけやすい場所の傾向としては、大きな駅の駅前や、再開発で新しくつくられた街並み、景観を大切にしている観光地の通りなどが挙げられるよ。歩いていて「あれ、空が広いな」と感じたら、電線が横切っていないサインかもしれない。

でんチュン流の観察あそびはこれ。「電柱がない通りに入ったら、地上の箱をさがしてみよう」。電線はどこを通っている? トランスの仕事はだれがしている? と考えながら歩くと、電柱のない通りも立派な観察フィールドになるんだ。

地上機器の箱は、街に電気を届けている大切な設備だよ。さわったり、登ったり、物を立てかけたりせず、観察は目だけでね。約束だよ。

よくある質問

世界で無電柱化が進んでいる都市は?

国土交通省の公開ページでは、ロンドン・パリなどのヨーロッパの主要都市や、香港・シンガポールなどのアジアの主要都市では無電柱化が概成している(おおむね完成している)とされているよ。ただし各都市の数字は調べた年(2001〜2018年)や数え方がちがう点には注意してね。

日本の無電柱化率は?

国土交通省の公開ページでは、東京23区で8%、大阪市で6%(2019年度末時点・道路延長ベース)と紹介されているよ。都道府県別のページ(2021年度末時点)では、最も高い東京都でも5%台とされていて、全国的にはまだこれからの取り組みなんだ。

なぜ日本では地中化が進まないの?

国立国会図書館の資料(2016年)では、最大の理由は整備費用の高さと言われているんだ。道路1km当たり土木工事に約3.5億円・電気設備工事に約1.8億円かかるとされ、電柱を使う場合(1000〜2000万円)よりずっと高額なんだって。戦後から一貫して架空線で整備してきた歴史的な経緯も紹介されているよ。

電柱がなくなったら変圧器はどこに行くの?

電線類は道路の下の管路に収められて、変圧器などは「地上機器」として地上に設置されるとされているよ。電柱のない通りの歩道の脇に立っている四角い金属の箱がそれかもしれない。柱の上のトランスと同じ仕事を、地上の箱がしているんだ。

あわせて読みたい

参考にした公開情報