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なぜ日本は電柱だらけ? — 世界の無電柱化くらべ
最終更新: 2026-09-20/公開情報をもとに作成しています
スズメのなかまは、世界のいろんな街で暮らしているんだって。そのなかまたちの街の写真を見ると、あれ?と思うことがあるんだ。——電柱が、ないんだよ。空を見上げても、電線が1本も横切っていない街並みがあるんだって。
ぼくのおうちがある日本には、国土交通省の報道発表(2022年)によると、全国に約3,600万本もの電柱が存在するとされているよ。どうして日本には電柱がたくさんあって、電柱のない国もあるんだろう?
「でんチュンの世界の電柱たび」の第1回は、その素朴なギモンがテーマ。世界の無電柱化のようすと、日本に電柱が多い理由、そして電柱がなくなった街で変圧器がどこにいるのかまで、公開されている資料をたよりに旅してみるよ。
世界の街には、電柱がない場所がある
国土交通省の「無電柱化の整備状況(国内、海外)」のページでは、ロンドン・パリなどのヨーロッパの主要都市や、香港・シンガポールなどのアジアの主要都市では無電柱化が「概成」している——つまり、おおむね完成しているとされているんだ。街の電線が地中などに収められていて、電柱が立っていない状態が、あたりまえの景色になっている都市があるんだね。
いっぽう日本はというと、同じページでは、日本の無電柱化率は東京23区で8%、大阪市で6%(2019年度末時点・道路延長ベース)と紹介されていて、海外の主要都市に対して「立ち遅れています」と書かれているよ。日本でいちばん進んでいるエリアでも、まだ1割に届いていないんだ。
ひとつだけ、数字を見るときの注意だよ。このページの海外の数字は都市ごとに調べた年がちがっていて、ロンドンは2018年、パリと香港は2004年、シンガポールは2001年の状況(ケーブル延長ベース)とされているんだ。日本の数字(道路延長ベース)とは数え方もちがうから、きっちり同じものさしでくらべた数字ではない、ということは覚えておいてね。それでも「電柱がほぼない都市がある」と「日本はまだ1割未満」という大きな絵は、はっきり見えてくるよ。
日本に電柱が多いのはなぜ?
国土交通省の報道発表(2022年)では、全国には依然として約3,600万本の電柱が存在し、毎年数万本単位で増え続けている状況にあるとされているんだ。無電柱化が進められる一方で、新しく建つ電柱もまだ多いんだね。
どうしてこうなったのかは、国立国会図書館の資料「無電柱化をめぐる近年の動向」(2016年)が歴史をたどって説明してくれているよ。日本では戦後から一貫して、電線を電柱に架ける「架空線」による整備が一般的だったんだって。戦災からの復興、そして経済成長へと進むなかで「安い電気の安定供給」がなにより優先されて、地中化よりも先に電線の被覆技術が普及したこともあり、現在まで架空線での整備が続いてきた——とされているんだ。
同じ資料では、海外の歴史もちょっとだけのぞけるよ。ロンドンでは19世紀末、ガス管がすでに地中にあったことから公正な競争のために電線も地中化が義務付けられ、ニューヨークでは架空電線での感電事故が問題になって、安全のために行政主導で無電柱化が進められた、と紹介されているんだ。国がちがえば、電気の歴史もちがうんだね。
もうひとつの大きな理由がお金だよ。同じ資料では、国土交通省の資料として、道路1km当たり、電線共同溝整備の土木工事に約3.5億円、電気設備工事に約1.8億円かかるとされていて、電柱を使用する場合(1000〜2000万円)に比べてずっと高額だと紹介されているんだ。日本の電柱そのものの種類や本数の話は、図鑑の「電柱の種類」のページでもしているよ。
電線共同溝整備の土木工事約3.5億円
電線共同溝整備の電気設備工事約1.8億円
電柱を使用する場合1,000〜2,000万円
道路1kmあたりの費用
電柱の棒の薄い部分は、1,000万円から2,000万円までの幅を示します。
出典: 国立国会図書館「無電柱化をめぐる近年の動向―課題と推進策―」(調査と情報 No.921・2016年)8ページ(国土交通省の資料として紹介)
数値を表で見る
| 項目 | 道路1kmあたり |
|---|---|
| 電線共同溝整備の土木工事 | 約3.5億円 |
| 電線共同溝整備の電気設備工事 | 約1.8億円 |
| 電柱を使用する場合 | 1,000〜2,000万円 |
無電柱化のいいところ・むずかしいところ
無電柱化には、いいところと、むずかしいところの両方があるとされているよ。ここでは国立国会図書館の資料(2016年)で整理されている内容を、両方そのまま並べて紹介するね。どちらが正しい、と決めるページではないよ。
まずは、いいところとして挙げられている3点だよ。
- 景観: 電柱や電線類が撤去されることによる良好な景観形成の効果が大きいとされているよ。
- 通行空間: 道路上の障害物となる電柱がなくなることで通行空間が広がり、衝突事故等の防止に資するとされているんだ。高齢の人や障害のある人の移動をスムーズにするバリアフリーの観点からも重要とされているよ。
- 防災: 阪神・淡路大震災(1995年)では電柱8,000本以上が倒壊し、東日本大震災(2011年)でも電柱5万6000本が被害を受けたと報告されていて、いずれの震災でも地中線のほうが架空線よりも電気の供給支障の発生率が低かったとされているんだ。
いっぽうで、むずかしいところも同じ資料に整理されているよ。日本で無電柱化が進まない最大の理由は整備費用の高さであると言われていること。日本の道路工事は埋戻しや仮復旧を毎日行う必要があって工事が長期化しやすいと指摘されていること。そして、変圧器などの「地上機器」の置き場所について地域の合意形成に苦労することや、幅の狭い道路(幅員2.5m未満)には対応しにくいことも課題とされているんだ。どう進めていくかは、国や自治体、電気・通信の事業者のあいだで今も検討が続いている話題だから、ぼくは両方の見かたをそのまま届けるよ。
電柱がない街で、変圧器はどこにいる?
ここで、観察好きのキミに関わる話をひとつ。国立国会図書館の資料(2016年)によると、いま主流の「電線共同溝方式」では、電線類は道路の下の管路に収められて、変圧器などは「地上機器」として地上に設置されるとされているんだ。同じ資料では、金沢市のように、地上機器を道路上に置かずに照明柱などへ埋め込んだり取り付けたりする「ソフト地中化」という手法も紹介されているよ。その地上機器がどんな箱で、中に何が入っていて、どうして地面の上に出ているのかは、図鑑の「地上機器」のページにまとめてあるからのぞいてみてね。
11月10日は「無電柱化の日」— 1が3本、そして0
ここで、暦の話をひとつ。11月10日は「無電柱化の日」なんだ。決めたのは法律だよ。e-Gov法令検索で全文が読める「無電柱化の推進に関する法律」(平成28年法律第112号)の第10条は、国民の間に広く無電柱化の重要性についての理解と関心を深めるようにするため「無電柱化の日を設ける」とし、その日を「十一月十日とする」と書いているんだ。
さらに、国及び地方公共団体はこの日に「その趣旨にふさわしい行事が実施されるよう努める」こととされているよ。日付まで条文に書かれている記念日なんだね。
じゃあ、どうして11月10日なんだろう。国土交通省中部地方整備局の「無電柱化の日」のページでは、「1」を並ぶ電柱に見立て、それを「0」にするという意味で11月10日としている、と説明されているよ。国土交通省の報道発表にも、同じ説明が載っているんだ。11と10をならべると、数字の1が3本ならんで、最後が0。ならんだ電柱を0にする、という見立てなんだね。
その日には、何が起きているんだろう。国土交通省の「無電柱化の推進」のページには、広報の項目として「11月10日は無電柱化の日」のポスターが掲げられているんだ。中部地方整備局のページには、市役所やショッピングモールで開かれたパネル展の開催情報が載っているよ。長野市の公開ページは法律の名前と番号(平成28年法律第112号)、そして日付の由来を紹介していて、世田谷区の公開ページは、区民の皆様も、11月10日は「無電柱化」について考えてみませんか、と呼びかけているよ。条文にある「趣旨にふさわしい行事」と、その広報。どちらもこうして公開の場に出てくるんだね。
この日にキミができることは、大がかりなものじゃなくていいんだ。家の前の通りに電柱が何本立っているかを、ただ数えてみる。それから、いつも通る道と、駅前の大きな通りとで、本数をくらべてみる。数えるだけだけど、いつもの通りの見え方はきっと変わるよ。電柱のない通りでの観察あそびは、このすぐあとの「日本の無電柱化はどこで見られる?」で紹介するね。季節ごとの観察のテーマは「電柱観察ごよみ」にまとめてあって、秋のページにこの日のミッションも入れてあるんだ。
日本の無電柱化はどこで見られる?
「電柱のない通り」は、じつは日本でも見られるよ。国土交通省の「都道府県・政令市別の無電柱化率」のページ(2021年度末時点)では、最も無電柱化率が高い東京都でも無電柱化されている道路は5%台で、特別区・政令市では無電柱化率が5%を超えているのは東京23区・大阪市・名古屋市のみとされているんだ。数字は小さいけれど、ゼロじゃない。つまり、さがせば出会えるということだね。
見つけやすい場所の傾向としては、大きな駅の駅前や、再開発で新しくつくられた街並み、景観を大切にしている観光地の通りなどが挙げられるよ。歩いていて「あれ、空が広いな」と感じたら、電線が横切っていないサインかもしれない。
でんチュン流の観察あそびはこれ。「電柱がない通りに入ったら、電線はどこを通っている? トランスの仕事はだれがしている?」と考えながら歩いてみよう。その答えになる歩道の箱——地上機器——のさがし方と、観察するときの約束は、図鑑の「地上機器」のページにまとめてあるよ。
歩道の箱は、街に電気を届けている大切な設備だよ。さわったり、登ったり、もたれたり、物を立てかけたりせず、観察は目だけでね。くわしい約束は図鑑の「地上機器」のページに書いてあるよ。
よくある質問
世界で無電柱化が進んでいる都市は?
国土交通省の公開ページでは、ロンドン・パリなどのヨーロッパの主要都市や、香港・シンガポールなどのアジアの主要都市では無電柱化が概成している(おおむね完成している)とされているよ。ただし各都市の数字は調べた年(2001〜2018年)や数え方がちがう点には注意してね。
日本の無電柱化率は?
国土交通省の公開ページでは、東京23区で8%、大阪市で6%(2019年度末時点・道路延長ベース)と紹介されているよ。都道府県別のページ(2021年度末時点)では、最も高い東京都でも5%台とされていて、全国的にはまだこれからの取り組みなんだ。
なぜ日本では地中化が進まないの?
国立国会図書館の資料(2016年)では、最大の理由は整備費用の高さと言われているんだ。道路1km当たり土木工事に約3.5億円・電気設備工事に約1.8億円かかるとされ、電柱を使う場合(1000〜2000万円)よりずっと高額なんだって。戦後から一貫して架空線で整備してきた歴史的な経緯も紹介されているよ。
電柱がなくなったら変圧器はどこに行くの?
電線類は道路の下の管路に収められて、変圧器などは「地上機器」として地上に設置されるとされているよ。電柱のない通りの歩道の脇に立っている四角い金属の箱がそれかもしれない。その箱の中身や、どうして地面の上に置かれているのかは、図鑑の「地上機器」のページでくわしく紹介しているよ。
無電柱化の日はいつ?なぜ11月10日なの?
「無電柱化の日」は11月10日だよ。「無電柱化の推進に関する法律」(平成28年法律第112号)の第10条が「無電柱化の日を設ける」とし、その日を「十一月十日とする」と定めているんだ。日付の由来は、国土交通省中部地方整備局の公開ページで、「1」を並ぶ電柱に見立て、それを「0」にするという意味で11月10日としている、と説明されているよ。
あわせて読みたい
参考にした公開情報
- 国土交通省「無電柱化の整備状況(国内、海外)」(外部リンク・新しいタブで開きます)
- 国土交通省「都道府県・政令市別の無電柱化率」(外部リンク・新しいタブで開きます)
- 国立国会図書館「無電柱化をめぐる近年の動向―課題と推進策―」(調査と情報 No.921・2016年)(外部リンク・新しいタブで開きます)
- 国土交通省 報道発表「電柱の増加要因を踏まえた新設電柱の抑制に向けた対応方策について」(2022年)(外部リンク・新しいタブで開きます)
- e-Gov法令検索「無電柱化の推進に関する法律」(平成28年法律第112号)(外部リンク・新しいタブで開きます)
- 国土交通省中部地方整備局「無電柱化の日」(外部リンク・新しいタブで開きます)
- 国土交通省 報道発表「11月10日は「無電柱化の日」」(2019年)(外部リンク・新しいタブで開きます)
- 国土交通省「無電柱化の推進」(外部リンク・新しいタブで開きます)
- 長野市「11月10日は「無電柱化の日」」(外部リンク・新しいタブで開きます)
- 世田谷区「無電柱化の日」(外部リンク・新しいタブで開きます)